登院しない議員は自動失職とする「ガーシー法」の制定を

7月の参議院議員選挙でNHK党の比例代表で当選した東谷義和氏(以下ガーシー)が参議院に登院しないと宣言し、話題になっています。ネットの書き込みを見ると「けしからん」という意見が圧倒的です。登院しない理由としてガーシーやNHK党の立花党首は、

・不当逮捕や暗殺の可能性があること

・居眠りする議員もいるのだから登院しなくてよいはず

・オンラインでも議論には参加できる

・ガーシーに投票した人は登院することよりも国会議員の悪事をユーチューブなどで暴くことで国会を変革することを期待している

などを挙げていますが、これはちょっと分が悪いと思われます。不当逮捕の可能性があるから登院できないというのならば、犯罪の嫌疑があるということであり、立候補したことが問題です。暗殺の可能性があるというのなら、警察に警護を依頼するか、私的にSPを雇うべきです。居眠りする議員も登院の義務は果たしていますので、登院しない人が言っても共感は得られません。オンライン会議については将来のことです。ガーシーに投票した人の意図については、ガーシーの名前を書いた人約29万人についてはそう理解してもよいですが、ガーシーが当選したのはNHK党と書いた約83万人がいたからです。約83万人はNHK受信料問題を解決して欲しいと考えてNHK党に投票しており、NHK党の現職参議院議員浜田聡氏のように国会で活動して欲しいと考えていると思われます。このようにガーシーが登院しない理由には無理があります。ネットでは「NHK党に投票した人はふざけるな」とか「反省しろ」という声が溢れていますが、NHK党に投票した人はガーシーに投票した訳ではなく、NHK受信料問題の解決のためにNHK党に投票したのであり、ガーシーについては当選して初めて知った人が多いと思います。だからNHK党に投票した人を批判するのは的外れです。

いずれにしても現状国会議員は登院することが義務付けられていることは間違いなく、正当な理由がなく登院しないと懲罰に付されることとなります。

議員懲罰権は、憲法第58条2項本文「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。」により各議院の権限となっており、各議院は国会法および議院規則で具体的懲罰を決めています。懲罰対象者は国会法124条により、

・正当な理由がなくて召集日から7日以内に召集に応じない

・正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席した

・請暇の期限を過ぎた

議員となっています。ガーシー議員は8月3日の登院日の前日2日に海外渡航届を提出したようですが、参議院議院運営理事会はこれを許可しませんでした。現在ドバイ在住なのですから当たり前と言えます。この結果ガーシー議員は不当な欠席となりました。今回は3日間の臨時会ですので、これで終わりとなりますが、次の通常国会でも欠席を続けるとなると、参議院としては何らかの対処をせざるを得なくなります。

その場合懲罰を課されることとなりますが、懲罰の種類としては

・公開議場における戒告

・公開議場における陳謝

・一定期間の登院停止

・除名

がありますが、登院しないので上の3つは意味がなく、最後の除名が検討されることとなります。除名は本来議院の秩序を乱した行為や議院の品位を落とした行為を対象としており、登院する意思がないという議員は本来の対象ではないと考えられます。登院の意思がないということは、議員となる前提を欠くということであり、本質的な立候補要件を満たしていないということになります。従って公職選挙法を改正し、立候補要件に登院の義務を履行する意思があることという要件を明記することが必要となります。また、国会開催期間中は国内に居住することという要件も明記した方がよいと思われます。これとは別にガーシーの場合既に当選しているので、登院して国会議員としての義務を果たす意思がない場合、具体的には正当な理由がない欠席が30日続いた場合、自動的に国会議員の資格を失う法律(俗称「ガーシー法」)を制定するのが良いと考えられます。ガーシーの場合、懲罰の問題ではなく、法律の不備ですから、これしかないと思われます。