新聞は検察のプロパガンダ担当
最近ヤフーニュースの新聞情報には収賄容疑で逮捕された元オリンピック組織委員会理事高橋治之氏の容疑を確信させるような記事が相次いでいます。8月20日を見ても、
・AOKI、電通子会社に2・5億円 「スポンサー料先払い」名目 賄賂性捜査(産経)
・「下限15億円」の3分の1で契約 AOKIスポンサー料 元理事、減額関与か・五輪汚職(時事通信)
・高橋治之容疑者、AOKI商品の迅速承認をIOCに要望か…組織委には販売延長も(読売)
・元理事のコンサル料「五輪事業も含まれてた」 AOKI前会長ら供述(朝日)
が見られました。いずれも「関係者」からの情報となっています。この「関係者」の多くは捜査している東京地検特捜部の検事のようです。中には逮捕された「AOKI元会長青木拡憲容疑者らの供述によると」なっており、捜査担当検事がリークしたと分かる表現もあります。これだけ贈収賄を裏付けるような情報が新聞やネットで発信されると、世の中の多くの人が高橋氏は黒と思ってしまいます。これで分かるのは、新聞が検察の逮捕を正当化する役割を果たしているということです。
高橋氏の逮捕には2つの大きな論点があります。1つは、収賄罪は公務員と言う身分がないと成立しませんが、高橋氏は元電通専務で現在個人企業を経営していることから分かるように公務員ではありません。これが収賄罪に問われたのは、オリンピック組織委員会理事に就任した時点で「みなし公務員」となったためでした。しかしこれを認識して理事になった人がどれだけいるでしょうか。就任依頼書や就任承諾書には書いていないようなので、誰もいないと思われます。高橋氏も「みなし公務員となるとは知らなかった」と言っているようですし、その通りだと思われます。何故ならば、公務員となれば贈収賄罪など法律規制が厳しくなることは誰だって分かりますから、高橋氏のようにスポーツに関連した企業を経営している人が公務員とみなされる理事に就任するはずがないからです。理事に就任せずに組織委員会とそれこそコンサル契約を結んだ方が安全に儲けることが出来ます。だから「みなし公務員」になると知っていて理事に就任することは有得ないのです。「みなし公務員」の認識がないのに収賄罪に問うのは無理があります。
もう1つは、高橋氏の東京オリンピック招致成功への貢献は大きいと言われており、その貢献を考えれば収賄罪で逮捕するのはどうなのか、ということです。東京オリンピック招致は2013年9月7日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでのIOC総会で決定しましたが、スペインのマドリード、トルコのイスタンブールおよび日本の東京が立候補し、イスタンブールと東京の決選投票となりました。このように招致は決して楽なものではなく、投票権を持つIOC委員への働きかけは、立候補した都市やその国から熾烈を極めたものと思われます。当然資金提供を求める委員もおり、それに応じた都市や国もあると思われます。日本で招致の中心になった日本オリンピック委員会(JOC)がこれらの委員に対応できるはずがなく、JOCの竹田会長の親友だった高橋氏が広い人脈や交渉力を発揮して差配したものと思われます。その結果フランス検察が捜査している他国のIOC委員への資金の提供(フランス検察は贈賄としている)もあったと考えられます。しかしこれはフランスの法律での話であり、日本や他国では問題になっていません。一方これらのことがあって招致は成功しており、高橋氏の貢献は大きいと思われます。その後高橋氏とスポンサー企業となったアオキの間で、贈収賄が疑われる取引があったとしても、高橋氏の東京オリンピック招致と準備に果たした貢献とを比較考量すれば、逮捕しないという判断になるのが妥当なように思われます。逮捕=起訴ではありませんし、起訴は検察の裁量に委ねられているわけですから、前述のような考量に基づき起訴しないという判断があっても良いと思われます。これについては不起訴不当の申し立てが検察審査会になされるでしょうから、妥当性は市民で構成される検査審査会で決めればよいと思います。たぶん不起訴不当議決(検察が再捜査して再び不起訴で終わり)で、起訴相当議決にはならないと思われます。
新聞は、検察のリーク情報を扱う場合、他の情報と同じように慎重な裏付け調査を行うと共に、発信する前にこのような視点も必要です。今の新聞は検察のリーク情報を飯の種とし、公務員の守秘義務違反の共犯となり、検察のプロパガンダ担当となっています。みっともない限りです。