医療費が減らないのは病院の固定収入になっているから

昨年2021年4月~10月(上半期)の医療費は25.5兆円で前年同期と比べると0.8%の増加となっています。コロナ患者が増えたのでコロナ患者関係の医療費が入っているでしょうから単純には比較できませんが、患者数との関係を見れば、医療費が増え続ける原因が見えてきます。昨年上半期の患者数は前年同期と比べ入院で5.7%、外来で5.0%減少しています。これに対し医療費は入院で1.0%増加、外来で1.8%増加しています。患者が減っているのに医療費が増加するのはおかしな現象です。入院についてはコロナ患者の医療費がかかったとも考えらえますが、コロナ患者の入院を受け入れたのは一部の公立病院や大学病院中心であり、病院の大多数はコロナ患者を受け入れなかった民間病院やクリニックが占めますので、5%も患者数が減ったら、医療費も減少するのが自然です。これがそうなっていないのには、思い当たる節があります。

私は昨年高血圧の治療で中規模(50床程度の入院病床がある)病院に通いました。殆ど3カ月に1度降圧剤を貰いに行くだけなのですが、外来はがら空きでした。私の場合1回の支払額は1,200円程度でしたから、病院の収入としては微々たるものです。「こんなので良く経営が成り立つな」と思っていたら昨年6月、血圧は良好にも関わらず胸部CT撮影や血液検査を提案されました。それまで経過が良好な場合、降圧剤の継続処方で済んでいたので驚きました。ガラガラの外来を見て経営的に大丈夫かなと思っていたので、収入を増やすためだなとピンときました。私の担当医は院長の息子だったので、院長から収入が少ないから検査を増やせと言われたようです。若いので検査の提案が不自然ですぐばれます。私としては、血圧値は良好であり検査の必要性は感じなかったのですが、毎回安い料金しか払わず病院にとっては良い患者ではないと分かっていたので、胸部CT撮影だけ承諾しました。

次に9月に行くと経過は良好にも関わらず、心臓CT観察(心臓の血液の流れをCTで見る)と胸部CT撮影および血液検査を提案されました。胸部CT撮影は前回もやりましたから本来あり得ないのですが、「経営が相当苦しいな」と思い、全部承諾しました。検査結果にはもちろん全く異状はありませんでした。

このように病院は経営状況に応じて検査の回数や種類を増やしています。だから医療費は患者数に関係なく病院経営に必要な額が使われることになります。患者数が減れば、その分来院患者の検査や薬を増やして経営に必要な収入を確保しているのです。

これは他の病院でもありました。足の甲に湿疹ができたためウイルス性でないか心配で皮膚科クリニックに行ったときのことです。単なるかぶれということでしたが、大型チューブ入りの外用薬に加え、内服薬も処方されました。降圧剤など2薬を服用していると申告していたので、かぶれ(それも治りかけている)で内服薬まで処方したのには驚きました。3剤も服用したら副作用が心配されますから、かぶれで内服薬はないところです(服用せず)。このクリニックもコロナのせいか待合室に患者がおらず、来た患者からなるべく多くの収入を得ようとしていることが明白でした。

このように医療費の大部分は医療機関経営の固定収入となっており、患者数に関係なく病院は請求してきます。だから医療機関の経費が上がれば医療費も上がる構造となっています。従って医療費上昇を抑えるには医療機関の数を減らすしかありません。その対象はコロナのような感染症だと協力しない民間病院とレベルが低いクリニックです。