民間病院に入院受入れ義務を負わせない感染症法改正案は無意味

政府は今秋の臨時国会に感染症法の改正案を提出することをめざすという報道です。

改正のポイントは、感染症が流行した際、確実に病床を確保したり、発熱外来を設置したり、自宅で療養する人を往診してもらったりするため、自治体と医療機関が平時から協定を結べるように感染症法に明記する、となっています。要するに今回のコロナ蔓延で医療機関に求められた体制が速やかにできるよう医療機関と協議し、予め協定を締結しておくということのようです。

特に、公立・公的医療機関や大学病院などの特定機能病院には、協定の締結が義務づけられるとのことですが、民間の医療機関とは、協定を結べる仕組みをつくるとなっています。

今回のコロナ蔓延で奮闘したのは公的医療機関や大学病院であり、多くの民間病院は協力しませんでした。あの医師会長の戦場の外から医療崩壊を叫ぶ様子が国民の反感を呼びました。これは多くの民間医師も感じていたようで、この医師会長は不人気のあまり、2期目の選挙に出馬も出来ませんでした。このようにコロナに非協力的な姿勢は、心ある民間病院の医師にも慚愧の念を待たせたようです。

従って感染症法を改正して医療体制を整備するとすれば、公的医療機関や大学病院との関係ではなく、民間病院との関係です。昨年コロナ蔓延により入院できない状態に陥り、たくさんの方が亡くなったのは、民間病院が病床を提供しなかったからです。日本には約160万床の病床があると言われている中で、コロナの入院用に提供されたのは約4万床と言われています。コロナは第2類感染症であり、感染した可能性のある国民は保健所に連絡し、保健所の指示に従う必要があります。と言うことは国の保護管理下に入ると言うことであり、国は保護に最善を尽くす義務があります。100万床の病床があるのに4万床しか確保せず、そのため亡くなった国民に対して国は義務を果たしたとは言えないと思われます。入院できず亡くなった方の遺族は、国は保護責任を果たさなかったとして国家賠償を求める権利があると思われます。ここまでこの訴訟が提起されていないのが不思議です。

今回の感染症改正案でも民間病院に対する姿勢はそのままであり、将来昨年のような感染症蔓延があれば、また入院できず亡くなる方が出てきます。これを防ぐためには、公的医療機関や大学病院に入院病床が無い場合、民間病院にも入院受入れ義務を負わせる必要があります。その場合、入院受入れにより院内感染症の発生などにより病院が損害を負った場合、その損害を補償する制度が必要です。要するに感染症対策に協力する限り、倒産させないと言いう姿勢を明確にする必要があります。この2つの対策が入っていない感染症法改正案は無意味と言えます。