日銀黒田総裁ご乱心!利上げは近いかも

日銀は9月22日の金融政策決定会合で低金利・金融緩和政策を維持することを決定しました。この決定そのものは予想通りですが、その後行われた記者会見での黒田総裁の発言には驚かされました。「当面、金利を引き上げることはない」と述べた上で「当面は数カ月ではなく2~3年の話と考えてもらっていい」と話したのです。これは乱心レベルの発言です。何故なら、黒田総裁の任期は来年3月までであり、2~3年先のことにはコントロールが及びません。また経済は生き物であり、日銀はその時々の経済状況に応じた金融政策を採る必要があり、2~3年先までの政策を縛るなどありえません。これは日銀マンなら誰でも分かっていることであり、これに反することを黒田総裁が言ったということは、黒田総裁は正気でない、乱心状態だと言ってよいと思います。

黒田総裁は2013年に日銀総裁に就任し、物価上昇率2%を目標に大規模金融緩和を実施しました。これは現金の市中流通量を増やして軽いインフレを起こして物価を引き上げることを目的としています。そのために日銀は金融機関などが保有する国債を買上げ、現金の供給量を増やしました。このままでは現金が金融機関に滞留するだけなので、政策金利も下げ銀行借り入れがしやすい環境を作りました。この結果住宅ローンなどが借りやすくなり、住宅購入などが増え、経済が活性化しました。それ以上に活性化したのは株式市場でした。それまでの日経平均株価が1万円以下だったのが一時3万円を超えましたから、3倍近く高騰したことになります。これの気分効果もあり物価も上昇の兆しを見せましたが、2019年10月に消費税2%引上げが実施されたことから一挙にマイナスに転じてしまいました。大規模金融緩和の結果上がったのは株式や不動産などの資産価格であり、庶民の所得は殆ど上がらなかったことから、2%消費税を引き上げれば家計の支出が減少するのは明らかでした。黒田総裁は2%物価上昇を大命題とするのなら、それの実現を阻害する消費税引上げには断固反対すべきだったのですが、なんと賛成派でした。このまま黒田総裁の任期中は2%物価上昇の達成はないと思われましたが、ウクライナ戦争による物価上昇によりここにきて2%物価上昇は軽く達成し、インフレが心配されるようになっています。

米国ではFRBが物価上昇抑制の姿勢を明確にし、政策決定会合毎に0.75%という大幅な金利引き上げを続けています。米国の場合消費者物価の上昇が9%に達しており、合理性はあります。日本の場合は8月に2.8%となりましたが、まだ黒田総裁が目標とする2%台であり、政策転換をしないのは理解できます。それでも10月から価格引き上げを実施する物が列をなしており、10月の消費者物価の上昇率は3%を超えることが予想されます。

こういう中での黒田総裁の前記乱心とも言える発言です。これについてマスコミでは私のような表現は見られません。日銀記者クラブに属するマスコミ記者は黒田総裁に取り入るため一切の批判を封印しているようです。新聞が購読部数を減らし、テレビが見られなくなっている理由が良く分かります。

一方黒田総裁のこの乱心発言は、政策転換が迫っている兆候とも考えられます。黒田総裁は就任早々大規模金融緩和を実施したように、政策転換にはサプライズが必要と考えているように見えます。消費者物価が目標として掲げた2%台から3%に突入した10月には政策金利の引上げがあってもおかしくありません。ドル円レートが150円台に迫っており、これ以上円安が続くとドル換算の日本のGDPは5兆ドル(1ドル110円換算)近辺から3兆ドル近辺になり、その結果1人当たりGDPも4万ドル台から2万ドル台に落ち、中進国レベルとなります。この結果黒田総裁の金融緩和政策は日本を世界の中進国に没落させたという歴史的評価となります。これが黒田総裁を利上げへと向かわせる圧力となります。