電通なしに東京オリンピック贈収賄事件は成り立たない
東京五輪・パラリンピックを巡り、大会運営の中軸を担った広告最大手の電通が11月25日、独禁法違反容疑で東京地検特捜部と公正取引委員会の家宅捜索を受けたという報道です。東京オリンピック費用のうち会場運営委託費は300億円近くと巨額で、これはテスト大会業務の受託額に応じて配分され、これは電通が主導して事前に調整していたと受託企業の1社であるADKが申告したということです。東京五輪は過去最多の33競技339種目、パラ大会は22競技539種目が実施され、本番さながらの環境で課題を洗い出すテスト大会が重要視されていました。テスト大会の計画業務は競争入札で決めることになっていましたが、事前調整により各社がこれまで手掛けたスポーツ事業の実績により配分することになったようです。これにより運営費用は多少増えたかも知れませんが、運営は上手くいったと考えられます。従って今更捜査する事件でもないとも思えます。
それを東京地検特捜部が捜査に着手したのは、捜査をほぼ終えたと言われる東京オリンピック贈収賄事件の逮捕者が組織委員会外の人間ばかりであり、組織委員会で贈収賄にかかる案件の意思決定をした人間が含まれておらず、贈収賄事件としてはおかしいからです。贈収賄罪は、贈収賄により公正な手続きがゆがめられた事がもっとも重要な保護法益であり、これまでの逮捕者を見ると贈賄者の要望を受け意思決定した人間がいません。そのため無理やり高橋治之氏を非常勤理事に就任した時点でみなし公務員となっており、金銭の受領には賄賂性があるとして東京オリンピック贈収賄事件の中心人物としています。非常勤理事は職務権限がなく、数カ月に1度理事会に出席して報告を聞くだけであり、意思決定に影響を及ぼす職務ではありません。従って非常勤理事を贈収賄罪に必要な身分とするには無理があります。今回の捜査においては贈賄者から現金200万円を受領したと言われる森元組織委員会会長は1回任意聴取されただけであり、意思決定の中心機関である事務局の武藤元事務総長については事情聴取されたという報道さえありません。このように今回の東京オリンピック贈収賄事件は、最初から高橋氏を逮捕することが目的だった可能性が高いと思われます。では何故東京地検特捜部が高橋氏逮捕に拘ったかというと、フランス検察が早くから東京オリンピック招致に関して日本オリンピック委員会がアフリカのIOC委員に賄賂を贈ったして捜査しており、これの実行犯として高橋氏を差し出すためと考えられます。今年4月フランス検察は、2018年11月東京地検特捜部が逮捕したのちレバノンに逃走した日産元会長のゴーン氏を国際指名手配したことから、東京地検特捜部はフランス検察に借りがある状態でした(今年の3月ゴーン氏と共謀したとして一緒に逮捕された日産元取締役ケリー氏の裁判で容疑の大部分が無罪とされ、ゴーン逮捕は冤罪と言う見方が強まっていた)。ゴーン氏を逮捕した当時の特捜部長と高橋氏を逮捕した東京地検次席検事は同一人物であることがこの疑いを強めています。
それは検察庁内部でも分かっていると思われます。それでもこの検事がエリートコースを歩んでいるため誰も止められないようです。しかし贈収賄事件で意思決定者の逮捕がないのは異常との話は出ていたと思われます。そのため捜査に着手されたのが今回の事件です。それでも捜査対象者は組織委員会の大会運営局に出向していた次長と電通職員、電通社内の担当職員の合計3名となっており、本当に贈収賄事件を解明する気はないことが伺えます。結局東京オリンピック贈収賄事件は、東京地検特捜部のフランス検察に対するお返しのための事件であり、逮捕者は気の毒としか言いようがありません。