日産は下に行くか上に行くかの岐路

1月9日、日産が第3四半期累計(2022年4月~12月)決算を発表しました。それによると連結売上高は前年同期比21.9%増の7兆4,997億円、連結営業利益は前年同期比51.4%増の2,897億円となっています。この数字だけ見ると頑張っているように見えます。一方気になるのが販売台数で、前年同期比17%減の約241万台となっています。この結果通期の販売台数の見通しを約370万台から約340万台に約30万台引き下げています。内訳を見ると北米が119万台から106万台へ13万台減少、中国が122万台から104万5000台へ17万5,000台減少となっています。日産はゴーン会長時代の2017年には577万台を販売しており、今期の販売台数はそれに比べると237万台減少し、減少率は約41%となります。この販売台数で前年同期を大幅に上回る売上高と営業利益を上げている点で経営陣は良くやっていると言えますが、販売台数が下げ止まっていないことから、今期は今後日産が上に行くか下に行くかの分岐点にあると言えると思います。

日産の財務内容を見てみると、総資産約18兆円、純資産約6兆円で、自己資本比率は約29%です。自己資本比率は良いとは言えませんが特に悪いとも言えないレベルです(トヨタ約39%、ホンダ46%)。借入金を見ると長期借入金が約2兆円、長期社債が約2兆円、短期借入金が約1兆円、長期社債の1年以内返済分が約1兆円となっています。たしか金利4~5%と高利の社債が1兆円ほどあったと思われ、これが償還されれば損益も更に改善します。固定資産約6兆円は自己資本約6兆円で賄っており、極めて安定した財務構造となっています。今の財務構造を見る限り危なさは感じられません。

2月6日日産とルノーは両社の関係見直しについて合意至ったと発表しました。それによると現在ルノーが日産に対して持つ43%の株式については、日産がルノーに対して持つ15%まで減らすものとし、減らす28%については信託し、徐々に売却して行くということです。一方日産はルノーが設立する電気自動車の新会社に15%まで出資することになっていますから、結局双方30%くらい持ち合う(ルノーは信託する株式のうち15%は売却しない)ことになると思われます。ただし日産の新会社への出資額が多くなると日産の財務内容を悪化させます。この見直しの結果、日産とルノーの関係は良く言えば対等なパートナーの関係、悪く言えばいつでも離れられる関係になったと言えます。今後両社の協業が上手く行かなかった場合、パートナーを組み替える話となりそうです。ルノーがステランティスに加わることや、フォルクスワーゲンと合併することも考えられます。その場合日産の新しいパートナーは、中国企業(東風汽車、吉利汽車など)が考えられます。ルノーが持ち株(43%)をこれらの企業に売却することもあり得ます。このように日産はルノーから独立したことによって厳しい道を歩むことになります。ゴーン追放時にここまで覚悟していたのかは知りませんが、決まった限りは頑張るしかありません。1月にトヨタは68歳の豊田社長から53才の佐藤恒治執行役員への社長交代を発表しました。これは電気自動車への転換には若い経営者でないと対応できないという豊田社長の考えに基づくものです。日産はゴーン事件の際検察と司法取引を行ない本来なら何らかの責任を問われる人まで免責となっています。この際これらの人を一掃し、トヨタと同じく若い世代に経営を委ねる必要があるように思われます。