楽天モバイル大赤字で楽天のネット事業が弱体化

楽天グループ(楽天G)の2022年12月期の連結決算は3,728億円の赤字になったとのことです。セグメント別営業損益を見るとインターネット事業が782億円の黒字、フィンテック(金融)事業が987億円の黒字、モバイル事業が4,928億円の赤字となっています。ネット事業の1,769億円の黒字をモバイル事業の4,928億円の赤字で食い潰している勘定です。この結果繰越損失が2,540億円、自己資本が8,701億円となっています。また営業キャッシュフローが2,579億円の流出となっており、これを楽天証券の株式売却約800億円、楽天モバイル債1,500億円の発行、外債700億円の発行などで補っています(今年2月にも楽天モバイル債2,500億円発行)。ネット事業が年間2,000億円程度の利益が出せることから同額程度の社債発行が可能となっています。従って楽天モバイルの赤字を年間2,000億円以内に抑えられれば、楽天グループとしては損益とキャッシュフローが均衡し、モバイル事業は節税事業と言えることになります。これが今期中に可能なことが三木谷社長を強気にさせているようです。ただしモバイル事業においては契約者が約450万人に留まっており、黒字化するには少なくとも1,000万人の契約が必要と見られていますので、モバイル事業の黒字化にはまだ3年以上かかると思われます。

このように楽天グループとして損益が均衡し、キャッシュフローの赤字が止まる目途がたったと思われますが、一方で本業であるネット事業が弱体化する可能性があります。と言うのは、祖業であるネットショッピング事業においてはアマゾンに勝てず、ヤフーショッピングに取扱高で追い抜かれる日も近いと見られますし、楽天銀行が上場できない中でライバルの住信ネット銀行は3月中の上場が確実視されており、こちらでも追い抜かれる可能性があります。また圧倒的発行枚数を誇る楽天カードもpaypayなどの決済事業の広がりにより頭打ちになると予想されます。中国アリババの伸び悩みでわかるようにネット事業は成長期から成熟期に入っており、今後は売上および利益の両面で大きな伸びは見込めないか、どこかで減少する場面になると予想されます。

こんな中楽天グループはモバイル事業に注力し、ネット事業の優秀な人材の多くをモバイル事業にシフトさせました。その中にはやりたい仕事と違うとして辞めて行った人も多いと思われます。またその結果ネット事業の人材が希薄化し、ネット事業の革新が進まなくなっていることも危惧されます。最近楽天モバイルの契約数を増やすため、楽天グループの社員全員に1人4名の契約を取るノルマを課したとの報道もあますが、今の楽天モバイルの品質だと友人には進めづらく、これが優秀な社員の離脱を招く恐れがあります。また楽天モバイルの巨額赤字報道は新卒者に楽天を敬遠させることになり、優秀な新卒者が入社しなくなっていると思われます。それに最近の三木谷社長の乱暴な発言(「いつまでのタダで使われても困る」「有料化は血の入れ替え」など)からこんな社長の下で働くのは嫌と考える新卒者も増えているように思われます。また楽天の年収は45~49歳平均で750万円とアマゾンやヤフーが1000万円を超えてると比べると低くなっており(幻冬社OLD ONLINE)、この点でも優秀な新卒者は入社しないと思われます。こう見てくると楽天のネット事業は弱体化が進んでおり、今後業績に表れて来ると考えられ、楽天グループの場合こちらの方が危惧されます。