日銀当座預金の実体は永久劣後債?

2月20日の日銀営業毎旬報告(報告)を見ると国債584兆円、当座預金522兆円となっています。2月10日の報告では国債584兆円、当座預金515兆円ですから、国債はそのままで当座預金が7兆円増えたことになります。2月20日付けのブログ「日銀の資金繰りが破綻していることを証明する」に書いたように、2月10日には国債と当座預金の差額が69兆円となっており、これ以上大きくなると日銀の資金繰りがつかなくなる状態でした。というのは、当座預金が減少しており、これ以上減少すると日銀は国債を売って返還資金を確保する必要がありますが、そうすると長期金利が上がり今の金融政策を維持できなくなるためできません。その結果銀行に当座預金をこれ以上引き出さないようにお願いするしかなくなります。これは借入金を返せなくなった取引先が銀行に返済の猶予を求めるのと同じであり、資金繰り破綻の状態です。

2月20日の報告では、日銀当座預金が7兆円増加し国債残高との差額が62兆円に縮小していますので、日銀の資金繰りは2月10日の段階より少し楽になっています。これは日銀の要請により銀行が当座預金を積み増したか、預金が増えたため銀行が日銀当座預金に預け入れたなどの原因が考えられます。

報告を見て毎回思うのは、日銀が当座預金といういつ引き出されるか分からない流動性資金を使い、なぜ売却できない国債を買うのかと言うことです。日銀保有国債は事実上長期保有資産化しており、運用と調達の原則からすれば購入原資は自己資金か長期性負債を充てる必要があります。これは財務や金融業務に携わる者の基本知識です。銀行が融資する場合、このような財務構造になっている企業には絶対融資しません。これを銀行の銀行である日銀がやっているのですから驚きです。これで銀行検査をするのはおこがましいと言えます。

なのにこれ(当座預金で売れない国債を買う)を続けているということは、日銀当座預金が通常言うところの当座預金ではないのではないか、という発想に行き当たります。日銀当座預金の中には法律に基づいて銀行預金の一定割合以上を預け入れなければならない法定準備預金がありますが、この額は10~20兆円と全体から見るとわずかです。ということは残り約500兆円は銀行等の金融機関(484機関)が預けている拘束期間のない預金=当座預金となります。しかしこの1年間を見れば当座預金が500兆円未満になることが少なくなっており、少なくともこのうち400兆円は返還されることがない預金であり永久預金と言えるものですが、日銀にとっては資本的性格を持った永久劣後債に近いのではないかと思われます。要するに金利が付くから資本金ではないけれど、破産した場合には資本金に近い扱い(戻ってこない)になるものです。こうでも考えない限り日銀が日銀当座預金で多くが売却できない国債を購入する理由が説明できません。いずれにしても資金源からすると国債は日銀が買っているというよりは銀行などの金融機関が買っているということになります。このため国債が償還できない場合にはその損害は銀行などの金融機関に及ぶことになります。そうだとすれば銀行などの金融機関は無防備と言えます。