日本電産はメーカーではなく商社?
3月13日日本電産は4月1日付けで5人が副社長に就任すると発表しました。このうちの1人が来年4月社長に就任するとのことです。永守会長の社長選びもこれでゴールが見えてきたということでしょうか。一方で5人の副社長の顔ぶれを見て日本電産の将来が少し心配になりました。それは5人の中に技術系の生え抜きがいなかったからです。5人の副社長の顔ぶれを見ると3人が銀行出身者で1名がメーカー(ソニー)出身者、1名が学者上がりです。このうち学者上がりの方が社長になることは無く、社長候補は残りの4名になると思われます。ソニー出身者は昨年1月に専務取締役車載事業本部長に就任しており、実績が未知数であることから来年の社長就任は無いと思われます。そうなると社長に就任するのは銀行出身の3人からということになります。銀行は数値目標の達成が業績評価の全てであり、3人には日本電産の「必ずやる」(必ず業績目標は達成する)の文化も違和感はなかったと思われます。特に三井住友銀行は銀行の中でも実力主義が徹底しており、三井住友銀行出身者と日本電産(永守会長)は似た者同士のように思われます。そのため三井住友銀行出身者2名のうちどちらかが社長に就任することになり、社長の役割が全事業部や子会社の統括となることから、グループ会社統括本部長を務める北尾氏が有力のように思われます。誰がなっても社長はCOOであり、永守会長のような全権CEOではなく全社の事業進捗の管理と調整が主業務でなので、社長により日本電産が大きく変わることはないと思われます。
経営陣に生え抜きの技術者がいないこの経営形態は、売上および利益追求型の商社あるいは銀行に近くメーカー機能(開発・生産)の弱体化が心配されます。
京都で日本電産のライバル企業である京セラは、創業者稲盛氏のあと京セラに入社した純粋に生え抜きの技術系役員を代々社長にしており、技術開発型企業のカルチャーを大事にしています。そのため京セラの開発力は今もって衰えていません。一方日本電産はというと創業後50年経っているにも関わらず今回の社長候補に純粋な生え抜きは1人もおらず、かつ技術系もいません。こうなると日本電産は本当に50年の社歴があるメーカーなのかと疑いたくなります。永守会長の関心は売上高と利益と株価のみであり、世の中に革新的製品を出し続けようと言うメーカーの気概が無くなっているように感じられます。日本電産はHDD駆動モーターの大量生産・大量販売で業績を伸ばしたようですが、次の成長商品が生まれていないように思われます。現在電気自動車向けのe-axleを次の中核商品にしようとしているようですが、上手く行っていないようです。e-axleはモーター技術以外にトランスアクスル(トランスミッションとデファレンシャルギアを一体化した装置)技術が必要ですが、これは自動車メーカーが長い時間を掛けて磨いてきた技術であり、日本電産は門外漢です。そのためギア関係のメーカーを買収して何とか作っているようですが、トヨタ系のアイシン精機のような自動車用オートマチックトランスミッションで世界的シェアを持つ企業との技術差は大きいと思われます。その為もあり日本電産のe-axle事業は計画から大幅に遅れており、日産から連れてきた関前社長の解任に繋がりました。これは技術的遅れが背景にあり、誰が責任者になっても変わらないように思われます。こういう中で今回副社長昇格者に技術系の生え抜きが1人も含まれなったことは、日本電産に技術軽視の社風があるように感じられてなりません。このまま行けば日本電産は技術が枯れて衰退していくように思われます。