大幅賃上げで今後社員間の賃金格差が広がる

今年の春闘では企業側から満額回答が続いています。日本の場合経営者は従業員出身のことが多いため、今回の大幅賃上げは昨年来の物価上昇で生活が苦しくなっている従業員支援の意図が大きいと思われます。1990年初めのバブル崩壊後日本の物価が下がり続けたため、企業は賃上げの必要性に迫られませんでした。この間業績を伸ばした企業もありますが、周りに合わせ賃上げをせず、せっせと内部留保に励んできました。その結果日本の多くの企業で内部留保が膨らんでいます。従って今年の賃上げは、これまで賃上げをしなかった分を少しまとめてしたと言う部分が大きいと思われます。それと国際企業では、今年ユニクロが大幅賃上げの理由とした海外従業員との賃金格差解消の狙いもあると思われます。日本に本社を置きながらグローバルに事業を展開している日本企業において、海外子会社の役員及び従業員の方が日本本社の役員及び従業員より高収入・高賃金というケースが多くなっており、経験を積んだ優秀な日本人社員が高収入を求めて海外企業に転職する事例が増えていました。そのため今の賃金水準では国際企業として生き残れないという状況になっています。これらが会いまって今年の賃上げラッシュがあります。

トヨタも組合の要求に対して満額回答しましたが、決断に当たり佐藤新社長は豊田新会長に対して「これは恐怖に近いです」と述べたということです。トヨタの場合年間数百億円のコストアップになるでしょうから、これをカバーするのは容易でなく新社長としての素直な感想だと思われます。それは今回大幅な賃上げを行った多くの経営者に共通の思いであり、4月以降の新事業年度からはこれまでと違う事業運営とならざるを得ません。これは更なる国際化の進展と言う形で現れることになりますが、国内部門の従業員においても賃金における国際化が進むと予想されます。その結果従業員の評価基準が海外と統一され、国際基準で賃金が決まることになると思われます。なかなか難しいことですが、先ずは賃金の社員格差が大きくなる形で現れると思われます。これまで同期入社なら40才くらいまであまり変わらなかった賃金が倍くらい違いようになります。今回の大幅賃上げは、賃金における社員格差拡大でしか吸収できず、今年大幅賃上げとなった会社の社員の皆さんは、厳しい社員間賃金競争を覚悟すべきです