500円の値上げで朝日新聞は100万部減少?
朝日新聞は4月5日朝夕刊セット版の月ぎめ購読料を5月1日から500円値上げして4,900円にすると発表しました。「え、また?」と思った人もいると思いますが、前回は2021年7月であり2年も経っていません。この値上げの直接的原因は2月27日に日本製紙が4月1日納入分から新聞用紙を値上げすると発表したことにあるようです。これ以外にも印刷代なども値上がりしており、3月1日には神奈川新聞が約10%の値上げを発表しましたし、静岡新聞は夕刊を廃止しました(価格は据置)。新聞紙と印刷代の値上がりを考えると朝日新聞の値上げ自体はどこの企業でも行き着く結論だと思われます。
問題は新聞購読部数が減り続けているなかで、この値上げで朝日新聞がどうなるかです。2022年下期(7~12月)の新聞各社の平均販売部数は、読売新聞663万部、朝日新聞397万部、毎日新聞185万部、日経新聞168万部、産経新聞99万部で、2019年下期と比べた減少率は、読売-16.4%、朝日新聞-26.0%、毎日-19.9%、日経-26.1%、産経-26.4%となっています。朝日新聞の場合、これに500円値上げの影響が加わることになります。今年は家計に物価上昇の影響がもろに響き、家計は支出の削減を迫られていることを考えれば、大幅な部数の減少は確実です。更に読売新聞が1年間値上げをしないと表明したことがこれに輪を掛けますます。読売新聞は3月25日付朝刊1面で「本紙は値上げしません 少なくとも1年間」との見出しで、「日本社会は、急激な物価上昇という厳しい状況に直面しています。4月以降も飲食料品などのさらなる値上げが予定され、対象は電気代など社会インフラにも及ぶ見通しです。物価高騰が家計を圧迫する中で、読者の皆さまに正確な情報を伝え、信頼に応える新聞の使命を全うしていくため、読売新聞社は少なくとも向こう1年間、朝夕刊セットの月ぎめ購読料4400円、朝刊1部売り150円、夕刊1部売り50円(いずれも消費税込み)を値上げしないことに決定しました」と書き、さらに2面では、「読者に奉仕 戸別配達網を堅持」という見出しで、「購読料を値上げすることは物価高騰に苦しむ国民から新聞を遠ざけることにつながりかねません。読売新聞社は購読料を据え置き、物価高騰に伴う負担は新聞販売店に転嫁しないで戸別配達網を堅持していきます」と書いています。この内容を見ると読売新聞は朝日新聞が値上げを決定したことの情報を得て、朝日新聞の顧客を奪うために1年間値上げをしないことを選択したように思われます。これは朝日新聞にとっては相当なダメージとなると思われ、場合によっては年間100万部の減少もあり得ると思われます。
昨年秋から朝日新聞は年配の社員に実質的な退職勧奨しているとの報道ですが、このような場合意図とは違って若手の退職が増えます。将来が長くまだ転職のチャンスがある若手が行動に移します。既に相当の若手が退職し、在職者でも退職を考えていない若手はいないと思われます。こうなると新しいメディアへの転換を難しくなります。今回の500円の値上げは、後から振り返ると朝日新聞の廃業を早めた値上げと言われることになると思われます。