法学部は治安維持要員の養成が目的

私は法学部を卒業しましたが、法学部進学は失敗だったと思っています。法学部を選んだのは高校時代数学や物理が得意でなかったため文系に進み、当時文系では法学部が最も難関だと言われていたからです。法学部へ行って弁護士になろうとか、官僚になろうとか言う志は全くありませんでした。将来の職業としてはおぼろげに公務員がありました。そんな状態で大学に入学したので教養課程で躓いてしまいました。授業に行く気がしないのです。教養課程の単位は何とか揃え専門課程に進みましたが、専門課程の授業も身に入らずこれも単位は何とか揃えましたがA(優)は殆どありませんでした。そして4年生の6月に友人の下宿に行ったら就職先が内定したと言われびっくりしました。当時は、就職活動解禁は10月1日からとなっており、私はそれを信じて何もしていませんでした。その友人の話によるとみんな3月から会社訪問を初め、6月の始めには内定が出ていると言うことでした。ここで出遅れた私は7月に公務員(県職員)試験を受けましたが準備は全くしていなかったため、これも落ちました。そこで初めて就職を意識し、留年して翌年県職員を目指すことにしました。10月から勉強を始めましたが、県職員の1次試験を突破するには司法試験の短答式や国家公務員の1次試験に合格するくらいの実力をつけておけばよいと考えて、試験が早いこの2つの試験に向けて準備することにしました。翌年この2つの試験は合格しましたが、司法試験論文試験は棄権し、国家公務員試験は論文面接試験で落ちました。県職員試験は1次試験に合格し、論文面接試験を受けたのですが落ちました。この段階では県の有力者の推薦がものをいうようで、それを知らない私は世間知らずでした。そのため10月から民間企業の入社試験を受け、ある大手メーカーに入社しました。その会社では最初法務部に配属されました。法務部は東大や京大など難関大学卒業者が揃っていました。所属当時はそんなに感じませんでしたが、後から考えると私は余り優秀な方ではなかったと思います。それに法務の仕事に面白さを感じず、苦痛で仕方ありませんでした。そんな状況もあって4年目に販売管理部に移動となりました。ここは販売店への売掛債権の管理や販売店の経営管理(監視)をするところで、損益計算書や貸借対照表、資金繰り表などの仕組みと販売から資金の回収にいたるまでの実務の流れを知りました。ここで初めて会社の仕組みを知った感じです。その後私はここで身に着けた会社診断や管理のノウハウを生かすべくベンチャー投資業界に転じました。今専門は何と言われればベンチャー投資となります。

こういう流れにおいて法学部を考えると、法学部は会社に就職するには余り有益でないと思われます。先ず法学部の授業が実社会の経験がない学生にはピンときません。司法試験に合格する人は文字の中から実社会の出来事を頭の中で再現する能力が優れていると思われます。私はこの点が全くダメでした。経験不足で頭の中での再現力がないのですから、法学部には向いていなかったと言えます。もしそのような能力が備わっていたら弁護士になりたかったかと言えば答えはノーです。司法試験の短答式の勉強のためたくさんの法学専門書を読み、判例を暗記しましたが、試験が終わったらすっかり忘れてしましました。痕跡も残っていません。それは生理的に嫌なものを無理やり頭に詰め込んだためだと思われます。このように法律に対して私の頭は拒絶反応を示していたように思われます。それはなぜかと言えば、法律や判例は個人の自由を抑制し縛るもので心地よくないからだと思われます。これをたくさん学んだ弁護士や裁判官、検察官などの法曹の仕事は、個人や法人のもめごとの仲裁であり、言わば世の中のどぶ浚いです(友人弁護士の話)。別の言い方をすれば世の中の治安維持と言っても良いと思われます。即ち法学部は社会の治安維持要員を養成するところであり、自由や創造性を重んじる学生が行くところではないと思われます。2022年度の東大文系の最低合格点を見ると文1(法学部)302.6点、文2(経済学部)306.1点、文3(文学部・教育学部)305.1点と文1が一番低くなっており、法学部の実体が学生に分かってきたように感じられます(ただし、最高点や平均点は文1が最も高いことから、上位合格者にはまだ優秀な人が多いことが伺える)。