新聞社のリストラは先の長い若手から
産経新聞が120人の希望退職を募集することになったようです。48歳以上が対象とのことですが、最大2,000万円の割増退職金が付くとのことですから、恵まれている方だと思われます。原因はコロナ禍による販売部数の大幅な減少と紙代や印刷代の値上がりで今期の損益が赤字となる予想となったことのようです。2022年10月末の新聞販売総部数は約2,869万部となり、前年同期の約3,065万分から約196万部減少し、ついに2,000万部台に突入しました。2000年の4,740万部から約40%の減少となります。産経新聞は昨年10月には前年同期から8%以上減少の約97万部となり100万部を切りました。これに昨年来の物価高騰で紙代や印刷代が相当値上がりしたということですから、会社としては2つの選択肢しかありません。新聞購読料を値上げするか、リストラをするかです。朝日新聞(約397万部)は値上げを選択し、5月1日から月購読料を4,400円から4,900円に上げることを発表しました。それに対して業界首位の読売新聞(約663万部)は購読料を1年間据え置くことを大々的に発表しています。これは体力のある読売新聞による弱っている朝日新聞潰し戦略と言ってよいと思われます。大手2社の戦略が分かれる中で他の全国紙(毎日、日経、産経)の対応が注目されていましたが、先ずは産経新聞が値上げせずにリストラを行うことを選択したということになります。値上げすれば販売部数を大幅に減らすことは明らかであり、この選択しかなかったと思われます。問題はリストラの規模で全社員1,500人強のところに120人を減らすとなっていますが、これは率で言えば約8%であり、昨年の販売部数の減少率とほぼ同じです。今期は物価高騰により昨年以上の販売部数の減少が予測される中で、紙代や印刷代の値上げが10%以上になると思われ、これでは損益の黒字化は望めません。今期黒字にするには全社員の2割以上のリストラが必要であり、かつ3年程度リストラをしないすれば500人のリストラが考えられます。従って今回の産経のリストラは一時しのぎに過ぎません。
新聞の販売総部数が今後昨年並みに年間約200万部減少し続けるとすれば、あと15年で0となります。新聞社の経営には一定の規模が必要ですから、販売部数が今の半分の1,500万部を切ってくれば、全国紙は3紙(読売、朝日、日経)に絞られると思われます。毎日新聞と産経新聞は5年以内に今後の方向性を決める(廃刊かネットメディアに転換)必要性に迫られそうです。生き残る3紙も今の社員数は維持できないのでリストラが不可避となりますが、その場合若手を優先して希望退職を募集すべきです。産経新聞の例で分かるように(朝日新聞でも同じ)希望退職の対象は40才後半からとなっていますが、新聞社の寿命があと15年程度と見込まれる中で一番不安を感じているのは先が長い若手社員です。希望退職の対象となっている人たちは何とか逃げ切れる人たちですから、この人たちで最後まで社業を全うするのが良いことになります。逆に若手社員には、今なら転職が可能であることから、年収の3年分くらいの割増退職金を付けて転職を支援するのが本人のためと言うことになります。この制度が実施されれば若手社員の多くが応募すると思われます。新聞社が生き残る道はネットメディア化しかないと思われますが、これに必要な人材は外から新たに採用します。新聞社の将来の見通しと社員の幸せを考えるとこれが一番良いと考えられます