NHK稲葉会長の異常な前田前会長への対抗意識

NHKが前田前会長(前田会長と表記)時代に実施した人事改革を元に戻すということです。前田会長が実施した人事改革というのは、

・職種別採用の廃止、

・管理職昇任試験を導入、

・管理職の割合を37%から25%に削減、

・地方局長には若手中堅を抜擢、

など民間企業では当たり前のことです。この結果、長く同じ業務を行ってきたベテラン職員が新しい業務に移動になった、管理職から外された、かっての部下が上司になったなど環境が激変するケースが出てきたためベテラン職員の不満が高まったようです。こんな中昨年11月9日の毎日新聞電子版に「NHK、会長主導改革の陰でコンサル費35億 原資は受信料=公金」という記事が掲載されました。これはNHKで2019年度のコンサル契約総額が約9億6,000万円だったのに、前田氏の会長就任後の2020年度は約13億6,000万円、21年度は約34億,9000万円と増加していることを問題としたものです。毎日新聞はスクープと銘打っていましたが、なんと同じ内容の記事が文春にも掲載されていましたので、やらせ記事であることが明白でした。前田会長は外部コンサル使うことによって改革に合理性と透明性を持たせようとしたものであり、妥当な行為です。この記事は前田会長の人事改革で不利益を受けるNHKのベテラン職員の依頼によりお友達の毎日新聞記者が書いたものであり、記事の本当の狙いは人事改革潰しにあります。この記事の中で「シニア層や中堅層に不満や怒りが充満し、それを見た若手も不安を抱いて次々と退職している」というNHK職員の声が紹介され、前田会長の人事改革が若手職員の退職を招いていると主張しています。この声の前半は良いとして後半は理屈になっていません。というのは、前田改革で若手は昇進スピードが速まりメリットが大きいことから、「不安を抱いて次々と退職する」理由にはなりません。これは前田改革で「不満や怒りが充満しているシニア層」の我田引水的なロジックです。ここまで来ると子供じみています(これを記事にした毎日新聞も)。如何にシニア層に多数の不良職員が滞留しているかが分かります。ここで若手の退職が続出していることを持ち出したのは、2021年3月「あさイチ」を担当していた若手有望株の近江友里恵アナが突然退社したことがマスコミに報道され、世間でその理由が詮索されたことを利用したものと思われます。近江アナは熊本局、福岡局時代から見ていますが、ニュース原稿を読むのは抜群に上手いですが、「あさイチ」のようなワイドショーの司会は向いておらず、そのことは本人が一番自覚していたと思われます。その中でブラタモリで街歩きの楽しさを知り、早大政経ゼミで学んだ街開発の仕事がしたくなり、三井不動産に行き着いたのでしょう。NHKでのアナウンサー経験は三井不動産での対人折衝やプレゼに有益であり、両方にとり良い選択だと思われます。NHK女子アナは難関大学出身者で学力もあり、コミュニケーション能力が優れていることから20~30代での転職は多くの大企業で歓迎されます。2022年3月末には東大卒の20代の堀菜穂子アナがコンサル会社に転職したようですが、これも本人の適正に基づく良い選択だと思われます。冷静に考えれば彼女らにとってニュース原稿を読むだけのNHKアナは能力を十分に発揮できる職業ではありません。ただし彼女らの退職の背景には、NHK受信料が国民の反発を招いており、NHK職員としては生きづらい、将来NHKが解体されるのは必至、という判断があると思われます。従って若手の退職はこれからも続くし、優秀な学卒の入社は期待できません。

こんな中前田会長の人事改革は若手にとってNHKが生き残れるかも知れいないと思わせるものだったと思われます。一方受信料収入が約7,000億円もあるのに何故改革が必要なのか、今まで通りで良いじゃないか、と考えるベテラン職員にとっては何としても撤回させなければならないものでした。

前田会長のやった改革はNHK史上最大のものであり、これにはNHKのベテラン職員を始め、総務省のNHK担当部署、自民党の総務委員会委員の反発が強かったことは想像に難くありません。そのためこれらの勢力は会長改選に当たって前田再選阻止で動き、目論見通り阻止しました(前田会長は安倍元首相の指名であり再選の可能性は無かったし、本人もその意思は無かった)。稲葉会長になったのは、自民党宮沢税制調査会長がいとこである岸田首相に推薦したものと思われます。と言うのは、稲葉会長と宮沢会長は東京教育大学付属中高で同級生および東大の同窓生だからです(日銀植田会長も宮沢会長の推薦)。この際に稲葉会長には前田改革潰しの使命が与えられたものと思われます。また日銀理事以外にこれと言った実績がなく(リコー取締役会議長はお飾り)、みずほフィナンシャルグループ社長という歴然たる実績を持つ前田会長と比較すると格下感が否めない稲葉会長としては、前田会長が行った改革を潰すことで自分(日銀理事)は前田会長(メガバンク社長)より格上だとアピールしたいものと思われます。

稲葉会長はBS番組のネット配信費用約9億円を今期予算に計上していた問題で、前田会長を悪者に仕立て上げるなど前田会長の影響力潰しに懸命です。これは江戸時代に新たに領主となった大名がしたこと(前領主の影響を消し去る)と同じであり、前領主に対するコンプレックスが強ければ強い程苛烈となります。

前田会長の人事改革は、外部コンサルの提案に基づくものであり合理性および透明性が高く、実施に当たって経営委員会の承認も受けていることから、会長が変わったからと言って簡単に変更できるものではないと考えれます。たぶん経営委員会が機能していれば承認されないのではないでしょうか。前田会長に対するコンプレックスの塊であり、職員に媚びることでしか会長職を全うできない稲葉会長の次の前田改革潰しは、受信料値下げの撤回になりそうです。