秋本議員収賄捜査は広島検事取調不正から目をそらさせるため
東京地検特捜部は8月4日、自民党の秋本真利衆議院議員の永田町の衆院第1議員会館の事務所や千葉県佐倉市の地元事務所を収賄容疑で家宅捜索したという報道です。
秋本議員の容疑は、政府が再エネ海域利用法に基づいて促進する洋上風力発電事業をめぐり、青森県の陸奥湾区域などへの参画を目指す日本風力開発から依頼を受け、同社に有利な国会質問をした謝礼として現金の提供を受けたというものです。
贈賄とされる日本風力開発の脇塚正幸社長の弁護士によると事実関係はこうです。
・秋本議員と脇塚社長は馬主仲間で、2021年秋競走馬を保有する馬主組合「パープルパッチレーシング」を設立した。
・出資割合は秋本議員名義が45%、脇塚社長の知人名義が45%、秋本氏の知人名義が10%。
・脇塚社長は2021年10月~2023年6月に20数回、秋本議員の求めに応じる形で、馬の購入代や餌代、厩舎代として、約2,000万円を組合口座に送金したほか、牧場などの取引先にも組合名義や脇塚社長名義で振り込んだ。また1,000万円は秋本議員に現金で渡した。
ただし弁護士は、風力発電事業とは無関係の競争馬のための資金であり、提供先も秋本議員個人ではなく、共同で運営する組合であるとして賄賂性を否定していました。贈賄側の弁護士としては贈賄性を否定するのは当然ですが、これは通らないように思われます。常識では考えられない資金提供であり、何らかの見返りを求める趣旨であることは明らかです。このためか脇塚社長は8月11日一転贈賄性を認める姿勢に転じたということです。
私が興味を持ったのはこの事件そのものよりも、東京地検特捜部が捜査に着手した時期です。というのは7月に、2019年7月の参議院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で河井克行元衆議院議員から資金を受取り、不起訴となったあと検察審査会で起訴相当議決を受け裁判になっている広島の県・市・町議員の多くが、取調検事から起訴しないから買収意図と知ってお金を受領したと認めるよう言われたとして、取調の違法性を主張していることが報道されたからです。この主張はこれらの議員が河井議員の裁判の中であっさりと買収資金だったと認めたことからある程度予想されていたことですが、こうも多くの被告の口から証言されると日本の司法の信頼を揺るがす大事件です。実質的には2010年に明らかになった大阪地検特捜部証拠改竄事件同じと言えます。従って新聞・テレビが大々的に取り上げれば今頃東京地検特捜部はこれへの対応で大忙しだったと思われます。秋本議員収賄事件にこのタイミングで捜査着手していることに注目すべきだと思われます。有体に言えば東京地検特捜部および検察庁が広島の違法取調問題への関心を逸らすために本件捜査に着手したと考えられます。検察の狙い通り新聞は検察リークの本件を熱心に報道し、広島検事取調不正はどっかに行ってしまいました。検察はこうして新聞の司法記者をコントロールしていることが分かります(広島検事取調不正を真っ先に報じた読売新聞は仕返しに本件についてはリークして貰えない印象です)。
もう1点注目すべき点は、8月4日には贈賄性を強く主張していた脇塚社長が11日には一転贈賄性を認めていることです。贈賄側とされる脇塚社長は7月から特捜部の事情聴取を受けているようですから、広島のケースと同じく検察と取引が成立した可能性があります。この場合起訴しないことは有得ないので、贈賄性を認めれば金額が小さいから執行猶予が付くように持っていくし、認めなければ悪質性が高いとして執行猶予が付かない判決を求めることになる、とでも言われたものと思われます。贈収賄事件は司法取引が使える事件ですので問題ありません。
東京地検の次席検事はゴーン事件で初めて司法取引制度を使用した特捜部長であり、次席検事になってからは東京オリンピック汚職事件で元電通専務高橋治之氏を“みなし公務員”に仕立て上げ強引に逮捕した責任者です。ここでは政府と森会長、武藤事務総長、竹田元JOC会長は逮捕しないと言う”取引”をしたように思われます。司法取引はこの方が中心となって検察内で一般的取り調べ手法化しているように思われます。