金融庁は損保への天下り実体を公表すべき
9月19日、ビッグモーター保険金不正請求事件(BM事件)で共犯と目される損保ジャパンに金融庁が立ち入り検査に入ったと言う報道です。本件が盛んに報道され始めたのは7月下旬ですから2カ月後の立ち入りと言うことになります。これについては、多くの国民が「遅い!」と感じていると思われます。金融庁としては、7月下旬の報道で知って、7月31日に関係損保7社に報告徴求命令を出し、8月31日に報告書の提出を受けて、それを分析して調査ポイントをまとめたらこのタイミングになったというシナリオのように思われます。
ヤフコメを見るとまだ金融庁に期待している人が多いですが、それは幻想です。金融庁と損保の関係は、江戸時代の定番時代劇に出て来る越後屋と悪徳代官の関係であり、越後屋が悪徳代官に渡す賄賂は金融庁職員の天下り増加になります。損保は高給で知らており、天下った金融庁職員はここで暫く高給を享受することになります。それでも損保が受け入れる天下り職員は誰でも良いわけではなく、それまでに金融庁の立ち入り検査で良くしてくれた(目こぼしをしてくれた)職員です。厳しく対処した職員が迎えられることは絶対にありません。そのため損保に対する金融庁の検査は形骸化しており、それが今回のBM事件に繋がっています。BM事件は2021年秋頃から報道されており、2022年2月には取引損保がサンプル調査を実施し、事実の可能性が高いとして同年7月下旬まで事故車の紹介を停止しています。これらの話は金融庁の耳にも入っていたはずですが、金融庁が動いた気配はありません。それに損保には金融庁職員が何人も天下っているはずで、本来彼らはそんなことが起きないようにする、起きたら速やかに止めさせる働きが期待されますが、すっかり損保側の人間になりきっています。このように監督する側(金融庁)と監督される側(損保)の一体化が進んでいるのです。これは2018年7月から2020年7月まで金融庁長官を務めた遠藤俊英氏が退官半年後の2021年1月には東京海上日動の顧問に就任していることが如実に示しています。更に同3月遠藤氏は瓜生・糸賀法律事務所顧問に就任し、損保ホールディングが8月7日に設けた社外調査委員会の委員長には同法律事務所に属する山口幹生弁護士が就任しているのです(山口弁護士は2023年3月に瓜生・糸賀法律事務所に入所)。このように損保ホールディングの社外調査委員会は金融庁との繋がりが疑われます。要するに金融庁の損保ジャパン立ち入りは、損保ジャパンと金融庁が作成したシナリオに乗っ取って行われている疑いがあります。従ってシナリオに沿って検査が行われ、最終的処分は白川社長辞任に加え7月中旬の損保ジャパン役員協議会でBMとの取引再開を強く主張したと言われる当時の専務(現常勤監査役)の辞任、その他BMと関係が深かった旧日本興亜損保グループの幹部追放処分に留まると予想されます。結局大きく変わる点は金融庁から損保ジャパンに天下る職員の数が増えることだけです。
金融庁がそうでない、本気だと言うなら損保ジャパンを始め損保(グループ会社も含む)に天下りしている元職員の人数を公表すべきです。それをしない限り金融庁は信頼されません。