日本のサッチャーは高市早苗から上川陽子へ

9月13日岸田首相が内閣改造を行いましたが、改造後新聞が実施した岸田内閣の支持率調査では、横這いか下落していますので、あまりぱっとしない顔ぶれだったことが分かります。その中で林外相が上川陽子議員と交代したがことが話題となりました。林議員は岸田首相の所属派閥宏池会のNO.2であり、岸田首相は首相就任には外相経験が重要と言っていますので、謎の人事と言われています。ここで俄然注目の人となったのが上川陽子議員です。上川議員は歴代内閣で女性の大臣に誰かとなると必ず名前が上がる人で、能力および人柄については自民党内で評価が高いようです。法相を3度勤めていることから、実務能力が高いことが伺えます。法相の仕事についてある法相が「死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職」と言って辞任に追い込まれたように、ある意味優秀な法務官僚の操り人形とも言えます。かって小泉内閣で法律ド素人の南野知恵子議員が任命され、しどろもどろの国会答弁が物議を醸しました。法務省幹部は司法試験をトップクラスで合格したエリートであることから、法相の役回りは大変難しいものとなっています。多くの法相が操り人形に甘んじる中で、法務官僚から比較的評価が高かったのが谷垣禎一法相と上川法相だったようです。谷垣氏は自らも弁護士資格を持っていますが、37才で司法試験に合格していますので、法務官僚と張り合う気はなく、政治面で防波堤になることで評価を得たように思われます。上川法相は法曹関係者ではなかったこともあり検察行政には一切口出ししなかったと思われますが、2018年7月24日にオウム真理教事件死刑囚6人の死刑執行命令書に署名したほか3度の法相在任中に16人の死刑執行命令書に署名したことで、法務省幹部の評価が高かったようです。死刑執行命令書に署名した後での記者会見も厳粛に行っており、国民の評価を高めました。

上川議員は東大、三菱総合研究所、ハーバード大学ケネディスクール、米国上院議員政策スタッフ、コンサル会社経営などの経歴が示す通り、本物の国際的政策通であり、どんな官庁の大臣も務まるように思えます。岸田内閣においても官房長官にとの声もあったようですが、他派閥との関係や「上川だけ優遇されている」と言う宏池会内の妬みもあって実現しなかったと言われています。

外務大臣になってすぐにニューヨークでの国連総会に出席し、その際にG7外相会議の議長を務めたようですが、無難にこなしています。個別の外相会談の様子を写した写真を見てもとても落ち着いており能力の高さが伺えます。

私も以前から上川議員の素養の高さには注目していましたが、自己アピールする人ではないことから今一つ人物像がはっきりしませんでした。一方で私が注目したのは高市早苗議員でした。それは2019年に2度目の総務大臣に就任した直後BSテレビ番組に出演し、河川の浚渫費として年間5,000億円を5年間にわたり確保したことを自慢げに話したことが切っ掛けでした。その頃梅雨の時期になると中小河川が氾濫し、流域の住民に多大な被害が発生していました。高市議員はこの対策として河床を浚渫することが効果的であり、ずっと訴えてきたが実現しなかったと言うのです。私の住んでいる所も近くを二級河川が流れており、梅雨時期には毎年何回か氾濫しもう少しで堤防を越水する状態になっていました。その最大の原因は河床に積もった大量の土砂であることは素人目にも分かりました。そんな日常の風景から問題点と効果的な対策を見つけ出すセンスや予算化するパワーを見ると、高市議員は並の女性議員ではないと思いました。そこで2020年3月13日に「高市早苗議員は日本のサッチャーになれるか」というブログを書きました。そしたら翌年9月の自民党総裁選に高市議員が立候補し、あっという間に日本のサッチャーになりそうになったのです。高市議員も若い頃英国サッチャー首相に憧れていたようで、盛んに自分は日本のサッチャーになるとアピールしていました。高市議員は総裁選には敗れましたが多数の票を得たことから将来の首相候補の座を確保しましたが、後ろ盾の安倍元首相が凶弾に倒れたことから勢いを失くしてしまいました。

それ以上に私が残念だったのは、自分が検討したことがある政策についての発言は論理的で洗練されていたのですが、それ以外に関する発言では未熟さが見られたことです。

例えば2022年3月9日参院議員会館で講演し、日本の核共有につて「核兵器の共有を想定した自衛隊法になっていない。現実的には難しい」と述べたことです。どこがおかしいかというと、自衛隊法との関係から核共有が難しいのなら、自衛隊法を改正すればいいだけのことだからです。国の存続ために核共有が必要であり、それを自衛隊法が邪魔しているとすれば、自衛隊法を改正すればよいのです。高市議員はこんな簡単な理屈が分からない人だったのでしょうか。自衛隊法を自分の主張を通す盾に使っています。このような例がいくつかあったことから、自分が良く検討した政策とそうでない普段の思考の間に大きな段差があることが分かりました。これは高市議員が成熟した人格者ではないことを意味しています。高市議員には政策オタクと言う一面と少女性が同居している感じがします。

そんな中で上川外相就任です。上川議員は、政策立案能力と遂行力は折り紙付きであり、かつ人格面も成熟しているように思われます。日本にも最近女性首相が誕生しても良いという風潮が出来ていることから、女性首相誕生は夢ではなく、その第一候補が上川陽子議員ではないかと考えるようになりました。なので私の中では、日本のサッチャーの呼称は高市早苗議員から上川陽子議員に変更したいと思います。