日銀植田総裁は汚バランスシートがお好き?
久しぶりに日銀営業毎旬報告(2023年9月30日時点)を見たらバランスシートの汚れっぷりに驚かされました。国債約586兆円に対し、日銀当座預金が約547兆円に達しています。日銀の総資産が約740兆円で、国債が約79%、日銀口座預金が約74%を占めますから、国債の殆どは日銀当座預金で購入していることが分かります。国債は流動資産の上から3番目に記載されていることから流動性が高い資産という位置付けですが、実際は大部分(少なくとも400兆円以上)が流動性のない資産(固定資産。というより不良資産)です。従ってこれを流動負債の上から2番目に記載されている流動性の高い日銀当座預金で購入することは、資金の運用調達面からは不適切ということになります。日銀当座預金の中には預金準備金と言う法律で銀行が預金の一定割合を日銀に預け入れなければならない固定性の資金があるのですが、この実額は数十兆円と言われています。従って日銀当座預金の大部分は当座性預金(いつでも引き出せる資金)ということになります。この資金で現状流動性がない国債を購入することは会計上の考え方では資金繰り上危険極まりないのですが、何の問題も生じていません。ということは、日銀当座預金はどうも流動性資金ではなく固定性資金(引き出されることがない資金)のようです。それもそのはずで国債の購入者である銀行は、国債の国入原資を信用創造(バランスシート負債側に国債購入資金相当額を預金として書き込む)で調達していることから、返済を迫られることがなく、日銀当座預金を引き出す必要がありません。このように日銀当座預金と言うのは間違った勘定名であり、実体は永久劣後債(スイスの銀行USBが発行し紙屑となったAT1債に近い)だと考えることが出来ます。本来国債は日銀券で購入するものですが、これだけ残高が大きくなると日銀が日銀券を発行して国債を購入している、即ち日銀が国に融資している(財政法5条で禁止されている)と言われることから、日銀券の発行を低く抑えている(約120兆円)ものと考えられます。これは日銀券に代えて民間銀行が銀行券を発行して国債を買い支えている、即ち国に融資している状態とも言えます。日銀当座預金には0.1%の利息が付くようなので、銀行としてはコストのない資金(信用創造で作り出した預金)で楽して儲けられる固定収益源として重宝しているものと思われます。
今の日銀のバランスシートから資金繰りを想定すると、ある日日銀当座預金10兆円の引き出し要求がくれば日銀は応じられない状況であると思われます。民間企業で言うところの黒字倒産企業のバランスシートです。
金利正常化に向けて動き出した植田総裁がこのような日銀の汚バランスシートをどのようにして正常化するのか見ものです。