熊本県庁の不正風土は蒲島知事が作った

熊本県が実施した旅行割引事業「くまもと再発見の旅」で、TKUヒューマンが既に分かった部分以外に助成金を不正に受け取った疑いがあるにも関わらず、県の幹部が追加調査をしないよう指示していたことが公益通報され、第三者委員会が調査している中、新たな事実が公開されました。それは既に返還された額に関するものですが、県庁内での打ち合わせの際県の次長級幹部がTKUヒューマンに返還請求する金額を減額するよう指示した音声データです。この音声データによると、次長級幹部が担当職員に対し、自身の上司2人の名前を挙げて「(返還額を)まけてくれとかそういう話になって、間に入って(上司2人と)今調整している」「希望は『これくらいがいいな』ってTKUが言いよらすけん、そこに最終的にアウトプットがなるように」「4500万(円)アッパーになってくると、ややこしくなる。希望的観測としては2500万(円)から10%、2千万(円)の10%ぐらいまでで止まればいいなと思う」などと述べているということです(発言内容は熊本日日新聞より引用。返還額が希望額近辺になっているので指示通りに処理した?)。

更に10月20日には、「TKUH(TKUヒューマン)名を公表しないことを条件に返納するとの申し入れ有り」と記載された県の公文書が存在することが明なかになりました。幹部への報告用として担当課が作成したとみられ、配布先として知事、副知事、知事公室長、総務部長、観光戦略部長が記載されているということです。

この文書について蒲島知事は20日夕、「私は一切分からない。そういう文書があったことも知らない」「知事まで文書が上がってきていないのは、公的な文書になっていないからということだろう」と説明したということです。これは総務省から流出し国会で問題になった文書と同じ理屈です。

蒲島知事は4月にTKUヒューマンから社名非公表の要請があったという報道について記者から「非公表要求は一切ないか」と問われ、「はい」と明言してしていました。これについては知事が嘘をついているとも考えられましたが、今回新たに開示された本件に関する報告文書には手書きで「知事には伝えない」と書いてあったことから、この時点では蒲島知事は本当に知らなかった可能性が出てきました(ただし最近書き加えられた可能性もある)。しかし9月8日に追加不正調査を県の幹部が見逃すよう指示していた事実が報道された際、蒲島知事は記者と次のようなやり取りをしています。

─通報内容は確認されましたか。

「事実確認するよう関係部局に指示した。調査、確認後に適切に対応したい」

─幹部が見逃しを指示したとされる約3千件(助成額約2千万円)について調査するのですか。

「そうだ。適正だったかどうかについて調査する」

─公益通報では、上司が担当課長に見逃しを指示した、と訴えています。

「私は指示したことはない。『上司からの指示』は報道を通じて知った」

─上司とは誰ですか。

「知らない」

この内最後の指示した上司は「知らない」という返答は確実に嘘です。その理由は、これが報道されることが分かった後、指示した上司と関係者は蒲島知事のところに事実関係の報告と対応の相談に駆け込んでいるはずだからです。そうでなくとも蒲島知事が副知事や関係者に問い合わせれば一発で分かります。だから「知らない」ということは絶対にありませんでした。私はこの「知らない」という返答を聞いて蒲島知事は平気で嘘をつく人だと思いました。誠実な人なら「知っているけど言えない」と答えるところです。

本件での県庁幹部の発言を見ていると、完全に公務員の規範を逸脱しており、それも常習性が感じられます。蒲島知事約16年間で熊本県庁は不正が蔓延する風土に変わったことが伺えます。たぶん熊本県庁史上最悪の不正風土にあると思われます。これは蒲島知事と幹部との間に親分子分の関係が出来上がり、子飼いの幹部は蒲島知事のために何でもやり、それに対して蒲島知事は出世で報いると共に多少不正をしても大目に見ることが行われてきたためと考えられます。今回蒲島知事が不正を知りながら部下を庇って嘘を言っているのが何よりの証拠です。

蒲島知事はこれまで名知事、熊本県政史上最高の知事と言われてきましたが、どうも違うと思われます。先ず就任早々川辺川ダム建設計画を中止するという大きな判断ミスを犯しました。蒲島知事はこの判断の根拠を民意に求めましたが、ダム建設是非の判断は「ダムが無くても住民の生命財産が守れるかどうか」という科学的知見に求めるのが常識です。この常識に従わなかったことで蒲島知事の知性が疑われました。蒲島知事はハーバード大ケネディスクール(政治学大学院)卒で東大法学部政治学科教授という高学力を思わせる経歴ですが、日本では山鹿農高卒であり、山鹿農高では220人中200番くらいだった(本人の弁。Wikipedia)と言うことですから、本質的に学力優秀とは考えられません。ハーバード大大学院は企業派遣やユニークな経歴で入学を許可する例も多く、蒲島知事もこの例だと思われます。私が蒲島知事の学力に疑問を持つ最大の理由は川辺川ダム建設計画中止判断ですが、その他にも肥薩線鉄道復旧推進もあります。こちらでは高校生にまでアンケートを取って肥薩線鉄道復旧を沿線住民の民意に仕立て上げています。本来民意を重視するのなら肥薩線鉄道復旧で経済的負担を負うことになる大人の意見に依るべきであって、高校生を利用するべきではありません。それに肥薩線鉄道復旧の是非は財政見通しを最も重視すべきです。これは鉄道空港線も同じですが、空港線の財政見通しも建設ありきで作成されているように思われます。このように蒲島知事の判断は、先ずは科学的・財政的知見を重視するという政策決定の基本が欠けており、民意に偏っています。それも偽装された民意です。そして民意偽装の実行者が蒲島知事に引き立てられた幹部であり、この結果不正がはびこる今の県庁の風土が出来上がったと考えられます。今の熊本県庁の不正風土は蒲島知事が作ったと言えます。