不正調査もしないTKUは放送免許取消が妥当

コロナによる旅行業の苦境を救うために熊本県が企画した旅行割引事業「くまもと再発見の旅」で熊本のローカルテレビ局TKUの旅行子会社TKUヒューマンが条件に合わない旅行商品を偽って助成金を受取っていた問題が今年の1月に発覚し、これについては今年の3月30日に参加する旅行会社のとりまとめに当たったJTB熊本支店が不正に受領した助成金を返還し解決しました。その際TKUとTKUヒューマンの幹部が熊本県の幹部に対して、社名を出さないよう要請していたことが問題になりましたが、蒲島知事が否定し、一旦この問題は収束しました。その後TKUヒューマンはその他の旅行商品でも不正に助成金を受取った疑いがあることが分かり、熊本県の担当課は調査を開始する計画でしたが、県の幹部から止めるよう指示されて中止になりました。このことが9月になって指示した音声データと共に熊本日日新聞に公益通報され、大々的に報道されました。その結果熊本県は10月初め第三者委員会を設け、現在調査が行われています。

そんな中10月17日、新たな音声データが公開されました。これは3月30日に返還された不正受給分に関するもので、この音声データには県の次長級の幹部がTKUから返還額をまけるよう要請されたので、その方向で進めるよう担当者に指示する声が録音されているとのことです。これを見ると熊本県庁の幹部職員の間に不正が蔓延していることが伺えます。さらに10月20日には3月に蒲島知事が否定し一旦終息した不正受給に関してTKUとTKUヒューマン幹部が社名は公表しないよう県の幹部に要請した経緯について、県の担当課が作成した文書があり、知事まで配布先になっていたことが明らかになりました。これについて蒲島知事は「私は見ていない」「公文書にはなっていないのではないか」と述べているということですが、今回新たに開示された本件に関する報告文書には手書きで「知事には伝えない」と書いてあったことから、この時点では蒲島知事は本当に知らなかった可能性が出てきました。

ここで新たな音声データが公益通報者から追加で公表されたということは、第三者委員会の設置に先立って熊本県の人事部が行った調査でもみ消しが図られているのかも知れません。通常第三者委員会を設置する場合、その調査に先立ってまたは並行して調査対象の組織が調査することはありません。それは関係者が口裏合わせをする危惧があるからです。現在県庁内ではこの危惧が現実になろうとしているのかも知れません。本件についてはいずれかの時点で蒲島知事も知っていた可能性が高く、第三者委員会の報告書によっては蒲島知事の辞職に至る可能性があります。第三者員会の委員を見ると検察官経験者が2人入っていますが、2人は2018年に熊本市議会がある議員に対して行った兼業禁止規定違反による議員資格喪失議決を無効と採決した熊本県の自治紛争処理委員会のメンバーであり、妥当な人選と言えます。従って本件に関して蒲島知事の責任を認める報告書を出す可能性は十分あります。報告書が蒲島知事の責任を認めなかったとしても管理責任は免れず、私は報告書の内容に拘わらず蒲島知事は辞職すると予想します。

さて本件で不思議なのは、不正を行った疑いが濃厚なTKUとTKUヒューマンが社内調査を実施しないことです。これぐらいの大問題になれば普通親会社であるTKUに第三者委員会を設け調査を開始します。それもTKUは国から特別に放送免許を与えられた放送局です。これを見るとTKUは放送免許を付与するにふさわしい放送局としての体質を有しないと言わざるをえません。県の幹部がTKU幹部の意向を尊重している所を見ると、TKUには県庁幹部が天下っている可能性があります。これが明らかになれば県の責任は更に大きくなります。またTKU幹部と県庁幹部が会食していた事実でも出てきたら贈収賄事件に発展することになります。これらの事実を知っている人の公益通報が待たれます。

ここまでのTKUの態度を見ると放送免許を与え続けるのはふさわしくなく、熊本県が設置した第三者委員会が公益通報された不正の事実を認定した場合、TKUは放送免許取消が妥当です。