政治家が怖いのは特捜部より検察審査会

2021年10月の衆院選をめぐり選挙運動員を買収した疑いで告発された寺田稔元総務大臣(現衆議員議員)の不起訴処分を不服として、大学教授に続き市民団体らが10月19日、検察審査会に審査を申し立てたと言う報道です。 寺田衆議院議員は、2021年の衆院選の告示日に、地元議員ら11人にポスター張りの報酬を支払ったことが選挙運動員の買収に当たるとして2022年11月、東京地検特捜部に告発されていました。 しかし特捜部は今年9月嫌疑不十分で不起訴処分としました。 この処分を問題視する市民団体の会員や団体の呼び掛けに応じた市民など合わせて128人が不起訴処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てたということです。

寺田議員は広島5区選出の当選6回で、2022年8月岸田内閣の改造で総務大臣に就任しましたが、週刊文春で身内への資金還流問題や脱税疑惑が報じられ、その年の11月20日に総務大臣を辞任していました。同月に特捜部に告発されていることから、辞任の本当の理由はこの告発だったものと思われます。この告発については今年の9月に不起訴処分となっていますが、これは寺田議員が岸田首相と同じ宏池会であることを考えれば初めから予想できました。特捜部が起訴した議員を見れば河井克行議員、菅原一秀議員、秋本真利議員といずれも無派閥(菅グループ)であり、政権派閥や主流派所属ではありません。これは政権が検察幹部人事を握っていることから検察が手を出せないためと考えられます。そのため寺田議員も特捜部が起訴することは全く考えていなかったと思われます。不起訴処分が発表された日に寺田議員は「厳格な捜査の結果、不起訴になったことを真摯に謙虚に受け止めます」と言う告発者をあざ笑うコメントを発表しています。

こんな強気なコメントを発表した寺田議員も検察審査会は恐怖でしかないと思われます。最近河井克行議員とその妻の案里議員の選挙買収事件で特捜部が被買収者を全員不起訴にしたにも拘わらず検察審査会は、被買収者のうち地方議員については起訴相当の議決をしています。この例からすると寺田議員には起訴相当議決が出されておかしくありません。そのため寺田議員は今後検察審査会の議決を固唾を飲んで待つことになると思われます。

司法取引制度の運用が始まってから、特捜部は政府と起訴・不起訴を取引するようになりましたから、自民党主流派の議員は特捜部から起訴される心配はなく、特捜部はそれほど怖い存在ではなくなっています。しかし検察審査会は政府のコントロールが効かず、政治家にとっては特捜部より怖い存在になっています。