山本投手3.25億ドルなら大谷選手7億ドルはバーゲン

プロ野球オリックスの山本由伸投手がドジャースと12年総額3億2,500万ドル(3.25億ドル。日本円で約465億円)で契約したと報道されました。契約額はコール投手(ヤンキース)の9年3億2,400万ドルを抜いて投手では史上最高額で、野手も含めるとシーガー選手(レンジャーズ)、スタントン選手(ヤンキース)に並ぶ9位タイとなるようです。契約額を1年平均にすると2,708万(約38億円)で、来季の投手では9位に相当するということです。

メジャーリーグでまだ1球も投げていない投手にこんな契約を結ぶのはクレイジーとしか思えません。山本投手は身長178㎝と小柄だし、WBCの準決勝でも打たれていましたから、私の評価ではメジャーリーグでは先発3,4番の投手で、年俸でいれば1,000~2,000万ドルがいいところです。これがここまで跳ね上がったのには3つの要因が考えられます。

1つは今年3月のWBCで日本が優勝し、日本の投手の優秀さが知れ渡ったことです。特に決勝の米国戦では、出てくる投手が皆メジャーリーグでも中継ぎで使えるようなレベルでした。こんな中で山本投手は日本のプロ野球で3年連続投手4冠ですから、断トツの実績NO.1でした。

2つ目は、同じくオリックスの吉田選手が昨年レッドソックスに入団し、今期アメリカンリーグで打率5位(.289)の実績を上げたことから、日本での実績はそのままメジャーリーグでの評価に使えることが証明されたことです。これはカブスの鈴木選手でも言えると思われます。

3つ目は、大谷選手の存在です。これまで日本の選手ではイチロー選手がMLBで一番成功を収めていますが、トップスターとまではいきませんでした。イチロー選手は実績ではMLBトップクラスですが、単打が多くホームランバッターが好きな米国ではトップスターではなかったと思われます。

その点大谷選手は投手とバッターという二刀流で成功し、米国野球ファンの誇りであるベーブルースの記録を塗り替えました。これを日本人がやったことで日本人野球選手の評価が大きく跳ね上がったのは間違いありません。

これらの3つの要因が重なって山本投手のクレイジーな契約金額があると思われます。そして山本投手の契約額が明らかになったことで、その前に明らかになった大谷選手の10年7億ドルという契約額がバーゲンであったことが明らかになりました。「エッ、山本投手の2倍以上の金額だから妥当なんじゃない?」と思う人が多いと思われますが、大谷選手の7億ドルは11年目から10年に渡って支払われる(後払い)のに対し、山本投手は毎年払いであることに留意する必要があります。金融業界にいる人なら分かることなのですが、大谷選手の場合、毎年受け取るはずの金額を運用に回し11年目から実際に受け取ると考えることができます。この運用利回りを8%とすると毎年払いの契約額が5億ドルであれば10年後7億ドルとなりますから、大谷選手の7億ドルを山本投手と同じ毎年払いに換算すると5億ドルとなります。

これをどう考えるかですが、私は大谷選手の10年7億ドルはバーゲン契約だったと思います。それは7億ドルの内訳が毎年払いの契約額5億㌦+10年の運用益2億㌦であり、運用益で契約額がかさ上げされているからです。運用益を考えるのなら、大谷選手の入団でドジャースは年間5,000万ドル以上の増収効果(日本企業の広告、グッズ売上、チケット高騰など)があると言われていますので、ドジャースは増収分のうち本来なら大谷選手に毎年支払う分(4,800万ドル。200万ドルは大谷選手に支払う)を銀行に信託し運用すれば10年後7億ドル溜まります。(こうすればドジャースが破産しても信託口座から大谷選手に支払われる)。この中からその後10年間毎年7,000万ドル支払うと残額はまた運用されるので約2億ドルの運用益が発生します。本来なら10年後7億ドルの一括払いとすべきところを10年の分割払いしているわけですから、この分も大谷選手の取り分であり、契約額は9億ドル(5億ドル+2億ドル+2億ドル)が妥当と言うことになります。7億ドルの契約では、大谷選手は11年目から分割で受け取る10年間の運用益(分割払いの金利)を放棄しており、この分は確実にバーゲンです。

そもそも大谷選手はドジャースに年間5,000万ドル以上の増収をもたらすことを考えれば、ドジャース球団の懐は痛まないことから、ドジャースが最初に提案したと考えられる5億ドルに、大谷選手入団に伴う10年間の増収分5億ドル(少なくとも)が大谷選手に支払える報酬(契約可能額)と考えられます。山本投手は大谷選手のような経済利益をドジャースにもたらすとは考えられないので、山本投手の契約額3.25億ドルを考えると、大谷選手の7億ドルの契約は経済的には大バーゲンということができます。

これで決着したのは、大谷選手が自分が高額の報酬を手にする結果チームが弱くなること、チームメイトとの関係が悪くなることを嫌ったためではないでしょうか。