検事の違法取り調べ容疑も検察審査会で審査する

2019年参院選広島選挙区での大規模買収事件を巡る捜査で、お金を受け取った広島市議(当時)らに対し不起訴を示唆して自白調書に署名させたとして、当該広島市議らが違法捜査であると主張している件について、最高検の監察部が調査を行った結果が公表されました。

捜査に当たった検事は、河井克行元法相から買収資金を受け取ったとして広島市議を事情聴取した際、「不起訴であったり、なるべく軽い処分に」などと発言し、買収資金と認識して受け取ったことを認めれば不起訴にすると採れる発言をし、これが録音されていました。取り調べを受けた他の市議数人が同様な発言があったと訴えています。実際取り調べを受けて検察の自白調書に署名した市議らは、当初全員不起訴となっています。今回のような買収事件では、これまで受け取った金額で起訴・不起訴が分けられていました(10万円が目安)が、本件では10万円以上受け取った議員も不起訴にしており、司法取引類似のことが行われたと予想されていました。本件不起訴については検察審査会に審査が申し立てられ、検察審査会ではお金を受け取った議員の多くを起訴相当と議決しました。これを受け検察は当初不起訴にした議員のほとんど(重病者が除かれた)を略式起訴しましたが、そうなると起訴された議員は約束が違うと怒るのは当然です。略式起訴された議員の中には略式裁判(容疑を認めれば終結)に応じず本裁判に移行し、自白調書は検察の違法捜査によるものであり証拠にはならないと主張します。これに対して今年10月広島地方裁判所は、贈収賄罪の成立は認めたうえで「不起訴を前提に被告を取り調べたことは否定できない」と指摘し、適正な捜査手法ではなかったとしましたが、違法捜査とまでは判断しませんでした。被告はこれを不満として上告する(した?)ようです。

2010年に大阪地検の検事が証拠を改ざんしていた事件を受けて、検察庁は最高検に監察部を設置していましたから、本来なら本件が報道されたら速やかに調査に着手すべきでしたが、着手したのは2023年になってからだと思われます。このような最高検の態度を見ていると、形だけの調査であり、今回のような実効性のない調査結果になるのは当初から予測されていました。

検察官の不正容疑については、検察が公平に調査処分できるはずがありません。例えば2020年元東京高検検事長の黒川弘務氏が在任中にかけマージャンをしていたとして告発された事件で、東京地検特捜部は2021年3月不起訴処分にしています。黒川氏が賭博を取り締まる検察のNO.2であったことを考えれば、不起訴はあり得ない処分でした。これに対しては検察審査会に審査が申し立てられ、検察審査会が起訴相当議決を行ったため、結局検察は略式起訴しました。この例で分かるように検察官が容疑者の場合、検察が取り調べ処分を下すのでは、公平性が担保できません。甘い処分になるのは必然であり、社会的納得は得られません。そこで検察官の不正容疑の市民からの申し立てについては、検察ではなく検察審査会で審査すべきです。直接検察審査会で審査してもよいし、最高検の調査結果を審査する形でもよいと思います。これをしないと検察官の不正がはびこり、検察庁は無法地帯化します。