賃金を上げるために0金利を解除する

日銀による0金利解除は、賃上げが出揃う今年4、5月頃が有力なようです。報道を見ると今年も昨年並みの賃金引上げ(賃上げ)を行うと表明する経営者が多く、昨年以上の賃上げが期待できます。その結果今年の0金利解除は確実のように思われます。

日銀は前任の黒田総裁のときから0金利解除は「2%の物価上昇が確実になったら」と言ってきていますが、実は「2%以上の賃上げが確実になったら」が正確なようです。

日銀が2%以上の物価上昇だけを言い続け、その裏にある2%以上の賃上げを言わなかった結果、日銀は国民の信頼を失ったように思われます。それはそうです。国民にとっては生活苦に繋がる物価上昇を目標に掲げる中央銀行は敵となります。2%以上の物価上昇に代えて2%以上の賃上げと言っていたら、黒田総裁はもっと国民の評価を得ていたと思われます。

世界を見ると物価上昇に合わせて大胆な賃上げが行われています。米国の自動車会社は軒並み10%以上の賃上げを決めていますし、トルコは来年1月から最低賃金を49%引き上げることを決定しました。トルコの場合、過去2年間に年間2回の賃上げを行い、最低賃を毎年倍増しています。この結果トルコの賃金水準は世界的にも上位にくると思われます。世界各国とも物価上昇率を上回る最低賃金引上げを行って来ており、日本と世界との最低賃金格差が広がっています。2023年7月にデータを見るとオーストラリア2,161円 ドイツ1,732円、イギリス1,729円、フランス1,608円、カナダ1,408円、韓国1,023円、日本961円となっています。これを見るとオーストラリアやイギリスなどに多くの日本人が下級労働者として出稼ぎに行っていると思われます。なんだか1900年初頭のブラジル移民の時代に逆戻りした感じがします。

日本も1990年頃のバブル崩壊以降2%の賃上げが続いていれば英国並みの賃金水準になっていたと考えられますが、日本は賃上げをせず物価を切り下げて対応しました。その結果物価が下がっているのだから賃上げは必要ないとなって賃上げが長い間行われませんでした。英国などは決して好調な経済環境ではなかったのですが、賃上げは確実に行ってきています。その結果物価も上昇し、デフレになることがなかったように思われます。

昨年物価が大きく上昇した影響で企業は堰を切ったように賃上げを行っています。これを見ると企業は賃上げを行う理由を探していたように思われます。物価の上昇が落ち着いた現在、次の賃上げの理由は金利の上昇となります。金利が上がれば物価が上がりますし、従業員のローン負担も増えます。従業員から上り詰めた日本企業の経営者は、従業員の生活状況を反映した賃上げを行う習性がありますから、金利上昇は賃上げに繋がります。このため日銀は民間企業の賃上げを待たず、賃上げの環境を作るために0金利解除を行うべきだと考えられます。