岸田首相で6兆8千億円の負担増加
岸田首相は衆議院予算委員会で、子ども・子育て政策(以下子ども政策)の財源として創設する「支援金制度」による国民負担について、「粗い試算として申し上げれば、支援金の総額を1兆円と想定する2028年度の拠出額は、(医療保険)加入者1人当たり月平均500円弱となると見込まれている」と述べましたが、これには3つの罠が仕掛けられています。
罠1;子ども政策の財源は、2028年度に3兆6千億円になり、国民から徴収する1兆円の支援金以外は現在の予算の支出から捻出するとなっていますが、これは民主党政権が唱えたことと同じであり、不可能です。例えば予算捻出の最大の対象である厚労省の2022年度予算は33兆1千億円(全体の約31%)ですが、このうち社会保障関係費が32兆8千億円を占めます。社会保障関係費の内訳は、年金約13兆円、医療約12兆2千億円、介護約3兆7千億円、福祉等約3兆8千億円となっています。これらは国民の生命維持のために支出されている費用であり、削減する余地はありません。無理やり削減すれば、その分はこれらを受ける国民が負担することになります。医療保険の窓口負担割合の引き上げ、国民年金への国の繰入額の削減、介護保険の自己負担額の引き上げなどが行われることになります。要するに厚労省予算から子ども政策費を捻出しようとすれば、その分国民の負担が増加します。従って子ども支援金の1兆円を除く2兆6千億円も国民の負担となるということです。
罠2;子ども支援金は2026年度から徴収を開始し2028年度の1兆円となるとしていますが、まず支出の削減分を充て、最後に子ども支援金の徴収とするのが筋です。政府は、支出の削減の見通しが立たないことから、子ども支援金の徴収から始める魂胆です。そして次の政権で支出削減は不可能として、全額子ども支援金での徴収となります。
罠3;これと同じことが防衛費増税でも行われます。防衛費は2023年度から2027年度までの総額を約43兆円とすることが決まり、2022年の5兆4千億円ベース(5年総額27兆円)からすると16兆円、年間3兆2千億円の増加となります、岸田首相はこの財源のうち年間1兆円は増税によると明言しています。しかし増税部分以外の2兆2千億円の財源は決まっておらず、これも結局増税するしかなくなります。その結果防衛費の増加分年間3兆2千億円は全額国民負担となることになります。
岸田首相はこれら3つの罠を仕掛けており、岸田首相交代後に国民はこの罠に嵌まったことに気付くことになります。岸田首相が仕掛けた罠によって国民負担は6兆8千億円増加します。