法科大学院は司法試験合格後の入学とすればよい

2月1日法務省の発表によると、2023年度の司法試験予備試験コース(以下予備試験)の最終合格者は479人だったということです。2023年度は予備試験を1万3,372人が受験し、昨年7月の短答式を2,685人、9月の論文式を487人が合格し、今年1月の口述試験に臨んだということです。全受験者数に対する最終合格者の割合は3.58%。 合格者の男女比は男性400人、女性79人で、女性の割合は16.49%。平均年齢は26.91歳で、最高年齢が69歳、最低年齢が16歳(19歳以下の合格者は3名)。 職種別にみると、大学生が286人、法科大学院生が21人、無職69人、会社員50人、公務員30人など(いずれも出願時)。大学生は前年比90人増、逆に法科大学院生は103人減となっています。

ここで法曹になるメインコースと位置付けられている司法試験法科大学院コース(以下司法試験)と予備試験の違いを見てみると、

・司法試験は法科大学院在学中か卒業の資格が必要だが、予備試験は必要ない。

・問題が相当異なる(短答式では予備試験には一般教養の問題もある、問題数が司法試験76問・予備試験40問、問題文が司法試験10ページ程度・予備試験2ページ程度)

・司法試験は短答式、論文式の2通りだが、予備試験にはそれに加え口述試験がある。

予備試験は当初経済的事情で法科大学院に行けない人の救済手段として用意されましたが、合格者の約60%(287人/479人)は、大学生であり、違う使われ方をしていることが分かります。即ち、法曹になるための最短コースとして利用されています。2023年度の司法試験の合格者数を見ると東大法科大学院出身者(在学生も含む)は186名と第2位(1位は188名の京大法科大学院)となっていますが、これは東大生は法学部在学中に予備試験に合格する学生が多いためです(2022年度の予備試験合格者は77人。京大は22人)。

これでは法科大学院は予備試験に合格できない人が法曹になるためのルート化するため、文部科学省は2023年度から法学部3年修了で法科大学院に進学でき、法科大学院在学中(卒業しなくても)に司法試験を受けられるようにしました。その結果2023年度には法科大学院在学中の合格者は667名(修了合格者817名)となっています。これを見ると法科大学院の授業は司法試験合格にあまり役立っていないことが伺えます。そのため今後とも法科大学院スルーは続くことが予想され、法科大学院を廃止する大学が増加しています。

これに対処するには、司法試験の受験資格を法科大学院在学中または修了に限定せず、司法試験合格後法科大学院に進学することを義務付け、法科大学院の授業の一環に司法修習を位置付けることが考えられます。法科大学院の授業を1年受けてから1年司法修習を受けることとします。この逆もあるかも知れません。法曹になったあと法科大学院での授業や人脈が役立ってくると思われます。これでも必要な法科大学院はせいぜい20程度となりますが、高い質を持つ法科大学院はその程度です。

2023年度の予備試験において16歳の合格者が出ています(他に19歳以下の合格者2名いる)が、この人は中学3年から司法試験予備校(伊藤塾)の授業を受け、3年で合格したようです。灘中学や開成中学に合格する生徒ならこの年代での合格が十分可能です。こうなると灘中高や開成中高にいかないで予備試験合格で法曹を目指す生徒が増えそうです。今後は、小学生の段階で子どもの才能を見極め、中学ではその才能を伸ばすような進路を準備してあげることが必要になっています。例えば法曹になるための法曹中高専門学校、会計士になるための会計中高専門学校などの開設が考えられます。この場合、資格取得後大学や大学院に編入学する人が多くなると思われます。こちらの方が学びが深くなります。