熊本知事選109票不明事件の再発が危惧される

熊本県知事選が3月7日に公示され、3月24日に投開票されます。4期16年間知事を務めた蒲島知事が引退し、16年ぶりに新しい知事が誕生します。現在のところ4名が立候補に名乗りを上げているようですが、実質的には元熊本市長幸山政史氏と前副知事の木村敬氏の一騎打ちとなりそうです。幸山氏は3度目の知事選挑戦であり、知事就任への執念が伺えます。一方木村氏は東大蒲島ゼミに所属し、総務省入省後は蒲島知事1期目の2008年に熊本県庁に赴任し2016年まで8年県庁勤務、2016年熊本地震発生により国の現地対策本部に移り支援、2020年に副知事として熊本県庁に赴任していますので、足掛け12年熊本県に奉職しています。蒲島知事は、2020年に木村氏と東大同期で次期知事候補と見られていた小野泰輔副知事を退任させて木村氏を招聘したことから、木村氏の知事選立候補は蒲島プランに乗っ取ったものと思われます。

これは過去2度の知事選の構図である蒲島VS幸山の延長戦であり、かなり競った戦いになると予想されます。幸山氏の場合2期8年熊本市長を務めており、そのときの支持者と市役所職員が集票の核となります。

そこで思い出されるのが2020年3月22日に投開票された知事選における109票不明事件です。これは蒲島氏と幸山氏の争いとなった知事選で、熊本市中央区での開票で投票した人数より確定した票数が109票も少ないと言う事態が発生した事件です。選挙開票において歴史上まれに見る大きな誤差でした。この誤差が発生する原因としては、(1)投票用紙を受け取った人の人数が間違っていた、(2)投票用紙を受け取った後投票せずに持ち帰った人がいた、(3)開票前後に票が人為的に抜き取られた、の3つが考えられます。(1)については、来場者名をチェックし投票用紙を渡しているので、間違いようがありません。(2)については、たまに迷いが出て投票しないで帰る人はいると思いますが、109人に上ることはあり得ません。それも投票者は記入後投票箱の前を通って出口に向かうことになっており、選挙管理人の目が光っています。投票せずに帰る人がいたら選挙管理人が注意しますので、1人、2人の見逃しはあっても、109人の見逃しはあり得ません。

そうなると、(3)以外にあり得ないことになります。この開票所の開票事務には熊本市役所職員125名が当たっており、元市長の幸山氏が立候補していたことから、幸山氏に恩義を感じている市役所職員が不正を行った可能性も考えられました。

本件について大西熊本市長は第三者委員会を設けましたが、委員長に行政が専門の大学教授を据え、弁護士1名、地元住民代表1名という構成であり、端から原因解明を意図したものではありませんでした。調査結果は予想通り原因不明であり、再発の目が残ることになりました。

熊本市選管はそれまでも開票ミスを重ねてきていたようで、

・2009年衆院選では投票記録の転記を誤り、比例票を一時紛失するなど初歩的なミスを連発。

・2012年衆院選では集票システムの設定ミスなどで、比例代表九州ブロックの議席確定に影響を与えた。

・2019年の統一地方選でも、県議選と市議選の不在者投票を期日前投票所で受け付けたため、計11票が「不受理」となった(不在者投票は期日前投票所ではできない)。

などがあったようです。

109票の誤差は選挙の公平性を危うくするものであり、警察が捜査すべきものでしたが、選挙の結果に影響を及ぼす数ではなかったことから捜査には至らなかったようです。その結果悪事を働いた輩がまだ健在しているとも考えられ、前回のノウハウを元にまた悪事を働くことが予想されます。熊本市職員が開票に関わる開票所は十分な監視が必要です。