九州で道州制を試行してみる

キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は熱心な道州制導入論者です。御手洗社長は、

「このまま日本がずっと変わらずに21世紀を終えたらどうなるだろうか。活力を失った日本は、地球の田舎の国になるだろう。ここで国家的ブレークスルーをしなければならない。国の構造を根本から変える蛮勇を振るうときだ。」と述べ、道州制の導入を主張しています。

私も今の日本の停滞を破るには道州制の導入しかないように思います。今の47都道府県制度は戦国時代以前からの地域割りに基づくものであり、江戸時代の制度をほぼ踏襲しています。国民の権利義務については明治維新や太平洋戦争敗戦により欧米の制度が導入されていますが、国民が闘争によって勝ち取ったものではなく意味も分からず与えられたものであるため、国民の血となり肉となってはいないと思われます。ここが日本の民主主義の弱点です。それが今の日本経済や政治の停滞の根源にあります。従って今の制度のままではこの停滞は脱出できないと考えらえます。

一方経済の広域化に伴い人やモノの移動は県境と無関係となっています。例えば関東では東京・神奈川・千葉・埼玉は1つの経済エリアとなっており、企業の中にはこの4つを1つの組織で見るところも多くなっています。このように経済活動では道州制に似た動きが先行しています。従ってこういう地域では、道州制はスムーズに実施できると思われますが、道州制の実施が望まれているのは、こういう経済発展地域ではなく経済不振地域、言い換えれば低所得地域です。低所得を脱すには今の制度を捨てるしかありません。そうだとすれば九州こそ道州制を真っ先に導入すべき地域となります。それは九州が貧しい県の集まりだからです。1人当たり県民所得(2020年)を見ると福岡県35位(2,630千円)、大分県36位、佐賀県38位、熊本県40位、長崎県42位、鹿児島県44位、宮崎県46位(2,432千円)と軒並み下位に位置しています。また2023年の最低賃金を見ると福岡県が19位(941円)とまあまあな位置にありますが、あとは佐賀県32位(900円)、大分県36位、長崎県・熊本県37位、宮崎県・鹿児島県38位(897円)と下位に固まっています(最低賃金の加重平均は1,004円)。九州が貧困島から脱するためには、日本で最初に道州制を実施するしかないと思われます。九州はそのための環境が整っています。先ず九州と言う道州に加わる県の線引きに悩む必要がありません。また州都も福岡市で決まりだと思われます。後は自治体の区分けですが、福岡県なら福岡市、北九州市、久留米市(筑後市)、飯塚市(筑豊市)4市で構成できますし、他県も行政区画の併合の併合で小数の市で構成できます。交通網も鉄道や高速道路が福岡市に集まっており、今でも福岡市は九州各県の若者が集まっており、若者の州都になっています。今後は大分から久留米、宮崎から新八代へ新幹線を通せば、九州新幹線を背骨とした動線が出来上がります。

道州制により九州は1つの国として経済政策を進めることとし、東京よりも台湾や韓国、中国との経済的結びつきを強めます。東京を向いていたら中央集権制度の下流に位置位置付けられ、貧乏県のままです。経済では韓国や台湾が日本より進んでおり、東京の大企業から学ぶより台湾や韓国の企業から学んだ方が先進的技術やサービスを導入できます。Look korea、Look taiwanです。これを続ければ九州は日本第4の経済地域になれます(関東、関西、中部の次)。そうでない限り日本の貧困島のままです。

九州は道州特区として道州制を試行するべきだと思われます。