大谷選手が送金するとすれば水原氏の口座

ソウルで行われたMLB開幕戦ドジャース対パドレスの翌日3月21日、大谷選手の通訳水原一平氏(以下水原氏)が、違法賭博を行っていたとしてドジャース球団から解雇されました。同時に大谷選手の代理人弁護士が、水原氏は大谷選手の資金を違法なブックメーカーで賭けるため「大規模な窃盗」に手を染めたとして刑事捜査を要請したと報道されています。ここでは窃盗の内容が問題になりますが、横領との比較でいうと、「管理を任されたお金を依頼者ではなく自分のために使うこと」が横領で、「管理を任されていないお金を自分のために使うこと」が窃盗となるようです。ということは、大谷選手の代理人弁護士は、水原氏が管理を任されていない大谷選手の銀行口座から勝手にお金を自分が賭博を行っていたブックメーカーの口座に振り込んだと主張していることになります。

これに対して水原氏は3月19日に行われたESPNの取材で「昨年に大谷に事情を話し、賭博の借金を返済してもらった」「もちろん、彼(大谷)はハッピーじゃなかった。『手助けするけど、もう二度としないように』と言われた」「2人で大谷のパソコンから大谷の口座にログインし、ブックメーカーに送金した。1回50万ドルを8~9回、数カ月にわたって送信した。最後の送信は10月だったと思う」大谷選手が水原氏ではなくブックメーカー側に直接送金したのは「大谷選手は私にそのお金をギャンブルに使わせたくなかった」と答えたということです。
この水原氏の説明からは、大谷選手は違法賭博による借金であることを知ったうえで、水原氏の借金返済として自らブックメーカーの口座に振り込んだことになります。これでも何となく理解してしまうのですが、自分を大谷選手に置き換えるとおかしいことに気付きます。大谷選手と水原氏の関係を考えると私が大谷選手の立場であっても立て替えてあげると思いますが、その場合でも水原氏へのローンとして水原氏の口座に振り込みます。こうしなかったことについて水原氏は「大谷選手は私にそのお金をギャンブルに使わせたくなかった」からだと述べていますが、これは府に落ちません。そもそも大谷選手はブックメーカーにとり債務者ではないことから、ブックメーカーは振り込まれてきても入金処理できません。これがすんなり入金(返済)処理されたということは、振込先であるブックメーカーは大谷選手から振り込みがあることを知っていたことになります。大谷選手がブックメーカー(違法とは知らなかったとしても)に自分の名前で、または自分の口座から振り込むとは考えられません。どんなに経済に疎くともこれくらいのことは分かります。

これにも関わらず大谷選手の口座からブックメーカーの口座へ振り込まれていたとすれば、2つのことが考えられます。

1つは振り込んだのは大谷選手ではなく水原氏だったということです。大谷選手自身の資金を水原氏が管理しているとは思われず、この可能性は薄いように思われます。あるとすれば、大谷選手と水原氏が共同で会社を作り、その会社の資金を水原氏が振り込んだことです。この会社の代表は大谷選手であり、水原氏は共同出資者に過ぎなかったにも関わらず、代表者の大谷選手を装って会社の資金をブックメーカーに振り込むことは可能なように思われます。この場合大谷選手としては、水原氏へのローンとして水原氏に振り込むことは承諾しても、ブックメーカーに直接振り込むことは承諾しないと思われます。なぜなら会社は債務者ではないからです。水原氏はブックメーカーに1回50万ドルを8、9回、数カ月に分けて振り込んだと言っていますので、水原氏が大谷選手にバレないように行った可能性が高いように思われます。そうだとすれば窃盗となります。

もう1つは、大谷選手が自らが管理する資金を水原氏の違法賭博借金の返済に充てる場合です。この場合、大谷選手がブックメーカーに直接振り込むことは考えられず、水原氏へのローンという形をとり、水原氏の口座に振り込むことになると思われますが、水原氏が口座を偽り、ブックメーカーの口座(法人。自分の会社と偽って)を指定すれば、そこに振り込まれることになります。これも窃盗になります。

このように水原氏が窃盗になるケースは2つ考えられますが、いずれの場合でも大谷選手は水原氏の借金返済資金を水原氏に貸すことについては同意していても、振込先はあくまで水原氏の口座であり、これをどういうわけか水原氏がブックメーカーの口座に振り込ませた、または自ら振り込んだ可能性が考えられます。狙いとすれば大谷選手が振り込んだという痕跡を作り、これを理由として大谷選手を違法賭博に引きずり込むことです。当然ブックメーカーと水原氏の共謀であり、「大規模な窃盗」となります。