発毛剤には危険が一杯

紅麹事件で機能性表示食品の危険性が意識されていますが、紅麹以上に市場が大きいと思われる発毛剤も危険が一杯です。

私は30歳前半に頭頂部の髪が5分の2程抜け、それ以来ツルツル禿になるのを防ぐべく発毛剤や育毛剤を使っています。これまでに10種類以上市販の発毛剤や育毛剤を使いました。こんなに種類が増えたのは、使った商品のほとんどが効果がなかったからですが、もう1つは健康に危害が及びそうなものがあったからです。その中からいくつか紹介したいと思います。

発毛剤と言えば真っ先に出てくるのが大正製薬のリアップ(商品名)です。この効果は発毛治療の医師の間でも認められています。リアップの有効成分はミノキシジルという化学物質ですが、これはもともと降圧剤(血圧を下げる薬)として発売されました。しかし重篤な副作用が見つかったことから発売後まもなくして販売中止となりました。そこで臨床試験中に発見された副作用である増毛作用に注目し、発毛剤として商品化されることとなりました。ミノキシジルは血管を拡張する効果がありますので、頭皮の血管を拡張し、毛母細胞に送られる栄養を増やし、発毛を促すと考えられます。私の場合も使い始めてまもなく髪がなくなった頭皮に産毛が多数生えてきました。ただし、せいぜい1㎝程度までしか伸びず、そこで脱毛発毛のサイクルを繰り返し、太く長くなりませんでした。

同時に血圧を下げる効果もあるので、頭皮に塗布しても血圧が下がります。私は若い頃から血圧が高かった(下が90~、上が140~)のですが、リアップを使い始めたら正常値(下が下が~70,上が~120)になりました。当初リアップの有効成分がもともとは降圧剤に使われていたことを知らず、これがリアップのせいだとは思わなかったのですが、後日このカラクリを知り、髪は生えなくても降圧効果だけでも使う価値があると思いました。これを止めたのは、40代半ばになって健康診断の心電図検査で不整脈が指摘されたからです。ミノキシジルが降圧剤として販売中止になった原因は、動脈と静脈で拡張効果が違う(動脈は広げるけれど、静脈は広げない)ためと言われており、その影響は動脈と静脈が集まる心臓で大きく出ると考えられます。そのため私はこの不整脈はリアップの使用が原因ではないかと考え、使用を中止しました(医師は加齢のためと説明)。その後リアップはミノキシジル濃度が5倍となり、第二類医薬品扱いとなったせいで、薬剤師の承認なしには購入できなくなりました。私も再度購入を試みましたが、薬剤師に「健康診断で不整脈を指摘されことがある」と言ったところ「それでは使用しない方がよいですね」と言って売ってくれませんでした。

このようにリアップは心臓が健全でない人には悪影響を及ぼすことが危惧されます。髪は生えたけれど心臓が悪くなったでは本末転倒なので、私はリアップの使用は諦めました。

次に医学的に発毛効果が認められているのは、第一三共ヘルスケアのカロヤンアポジカΣ(以下アポジカ。第二類医薬品)だと思われます。これの有効成分はカルプリニウム塩化物で、円形脱毛症などの治療に使われているようです。脱毛が進んだ私が次に手を出したのがこのアポジカでした。しかしこれは1週間ほど使用して止めました。先ず強烈な臭いがあり、生理的に体に悪い予感がしました。それと使用後3日目くらいから咳が出始めました。使用説明書の副作用欄には咳の記載はありませんでしたが、ネットでよく調べると副作用として咳が出る人がいることが分かりました。カルプリニウム塩化物は、血管を拡張する作用があり、肺気道(気管支)の血管も拡張する結果、血管から組織液が気管支粘膜表面に漏出して付着するため、これを咳で排出しようとするようです。これでは心臓ばかりでなく肺もやられそうなので、使えないのは当然です。

ひよこを使ったCMでお馴染みのニューモがこのカルプリニウム塩化物を使った発毛剤を発売したようですが、同じような問題があります。

たぶん医学的に発毛効果が認められている市販の発毛剤はこの2つだと思われます。いずれも第二類医薬品指定であり、慎重に使用しないと心臓や肺がいかれます。そんな中数年前私の登頂部の髪の残高が5分の1程度となったことから、最後の悪あがきが必要となりました。そこで頼ったのが花王の育毛剤バイタルチャージです。これはリアップの使用をやめた後使い始めたもので、驚きの発毛効果がありました。使い始めの頃1㎝くらいの発毛があったのです。これで禿解消かと思っていたら、そこで脱毛発毛を繰り返すサイクルに入り、太く長くならないことが分かりました。バイタルチャージの有効成分はt-フラバノンという物質で、発毛効果や育毛効果のエビデンスがある医薬品以外の唯一の市販育毛剤(発毛剤とは謳っていない)ではないかと思われます。t-フラバノンの良いところは心臓に悪影響を及ぼさない(と思われる)ところです(あくまで私見です)。私は降圧剤を服用しているため毎朝血圧を測定していますが、バイタルチャージを使用しても血圧に変動がありません。この点はリアップやアポジカとの大きな違いです。発毛剤は心臓に働きかける成分を使っているものが多く、使用するのなら毎日定時(起床後)に血圧測定をすることをお勧めします。ある発毛剤(育毛剤と謳っていたかも知れない)の試供品を購入し使用したら、翌日から血圧が大きく上昇しました(下80→95,上130→150)。なぜだろうと配合成分を見てみると一般的な成分のほかに人参(朝鮮人参)がありました。朝鮮人参は強心剤「救心」にも配合されており、心臓に影響を与える物質が含まれ、血圧の上昇につながったように思えました(個人差があるようです)。このように発毛剤や育毛剤は、心臓を悪くし命を縮める可能があるので慎重な使用が必要です。