医師の偏在解消には大学医局制度の復活が有効
4月15日の衆院決算行政監視委員会で武見厚生労働大臣は、「単に医師の増員によって医師不足が解消できるかといったら、そうではなかった」「規制を含めて、前例にとらわれない方法で問題を解決する政治的リーダーシップが必要」と述べて、地方や一部の診療科で医師が不足している偏在問題を解消するため、規制の導入も視野に入れ、年末までに具体策をまとめる方針を示したという報道です。
医師偏在をめぐってはこれまでも、医学部の定員に地域枠を設けたり、医師の研修制度で都道府県ごとに人数を割り当てたりする対策が試みられてきましたが、問題解決になっていません。医学部入学者は毎年9,420人前後いるため、人口の減少と相まって将来的に医師過剰となることは確実です。開業医で見ると今でも過剰になっていると思われる地域(都市)もあります。
規制などの強制的な手法には日本医師会などの反発が予想され、厚生労働省内に慎重な意見も根強いようですが、これをやらないと将来医師の低収入化やそれに伴うモラルの低下が起こり、日本の医療水準全体が低下します。
武見大臣は地域ごとに医師数を決めことにも言及したようですが、妥当です。それに医学部生の専攻診療科目にも規制を掛ける必要があります。最近の医学部では比較的負担が少ない皮膚科や内科などの希望者が多く、激務である外科や危険が伴う産婦人科の希望者は少ないと言われており、これでは国民に必要な医療は提供できません。従って専攻診療科も医学部ごとに定員を決めて成績と希望により割り振る必要があります。学生の自由選択に任せることはできません。
こういうことを考えると、以前の大学医局制度を復活することも検討する必要があると思われます。以前は大学医局が卒業生の研修先や勤務先を調整し、地方の中核病院などにもローテ―ションで医師を派遣していました。この制度によれば特定の医師が長期間地方の病院に勤務することは無くなりますし、医師の偏在も少なくできます。国としては地方の病院に勤務する医師の収入は、都市の病院に勤務する医師の1.5倍にする、その分都市の病院は少なくするなどの財政面の調整が必要となります。地方の病院勤務でお金を貯めて、その後都市の病院に勤務し、収入は少し少なくなるけど技術の鍛錬や充実した生活が送れることとなります。
将来医師が過剰になれば、医師も現在の歯科医のような収入状況(医師の半分程度)なるのは目に見えており、こうならないためには今から何らかの対策を応じることが必要です。医学部の定員削減も必要になるでしょうし、法的規制よりも以前の大学医局による調整が効果的と思われます。