携帯電話事業、家計を干乾びさせるつもり?

アベノミクスの影響で、大企業では好決算が続出し、賃金引上げ、ボーナス増加などの景気の良いニュースがたくさん見られます。一方日本の雇用の多くの割合を占める中小企業では、そんな景気の良いニュースは聞かれません。明らかに企業の収益力や個人の所得が二極化しているのです。豊かな人は益々豊かに、そうでないない人は益々生活が苦しくなっているのが実態です。

この中で最も危惧されるのが、公益事業が国民収奪事業化していることです。

その代表が携帯電話事業です。携帯電話事業は、国民の電波を使用した公益事業であり、インフラ事業です。先ず1人1台の携帯電話を持たないと生活できなくなっています。携帯電話の電波の使用を総務省から許可され実際に事業を行っている会社は3社ですが、この3社の2018年度の年間収入は約13兆円(ソフトバンクは国内通信事業のみ加味)です。電力会社の売上総額は約19兆円ですが、電力の場合、発電所の建設・運営・燃料代・送電線の維持などに相当のコストがかかることから理解できます。一方携帯電話は、電力と比べた遥にコストがかからないことは自明です。これだけの収入額に達しているのは、携帯電話事業が公益事業であることを忘れ、国民収奪事業化しているからです。それは、利益水準を見ればわかります。携帯3社の2018年3月期の営業利益総額は約2兆6000億円で、利益率は約20%となります。一方電力会社の同期の営業利益総額は約9800億円で、利益率は約5%です。携帯会社はいかに国民から収奪しているかが分かります。電力9社の営業利益総額は、ドコモ(約9700億円)やKDDI(約9600億円)並みであり、携帯電話事業は3位のソフトバンクでさえ約6800億円(国内通信事業のみ)あるのです。こんなに吸い上げられたら、家計はたまりません。これでは家計は干乾びてしまいます。所得の低い家計は、食費を削って携帯電話料金を払っているのが実情です。

政府はなぜ携帯電話会社による国民収奪を許すのでしょうか?携帯電話事業は総務省の許認可に基づいており、総務省の指導管理下にあります。携帯電話会社のある首脳は「私どもは総務省が決めたルールに従って事業をやっているだけ」と述べています。この国民収奪システムは総務省が作り上げていることになります。総務省は毎年家計調査を行っていますが、その結果に基づき携帯電話会社に吸い上げさせているようです。家計から吸い上げるのなら、税金としてであって、携帯電話料金としてではありません。総務省は国民収奪省に名称変更した方がよいと思います。

政府は、2019年10月からの消費税引上げによる景気悪化を心配し、企業に賃金引き上げを要請していますが、政府として携帯電話料金の引き下げを実施すれば、消費税引上げ相当の支出余地を家計にもたらすことができます。携帯電話料金を今の半額にすれば、消費税2%相当額(約5兆円)くらい家計の支出は減ります。それでも携帯電話3社は、3000億円くらいの利益は出せます。公益事業、インフラ事業ならこれくらいの利益で十分です。

携帯電話会社は、2年縛り、4年縛りとエスカレートし、解約でき無くし、収益を高止まりさせようとしています。その結果、回線も持たない仮想移動体通信事業者(MVNO)への乗り換えをできなくしています。尚、MVNOのことを格安携帯とか言っていますが、格安でないことは回線使用料を徴収している携帯3社が大きな利益をあげていることから分かります。携帯3社の回線使用料が下がらない限り、家計からの収奪は終わりません。

携帯電話事業の収奪事業化の影響は、他の公益事業にも広がってきています。電力会社が最近2年縛り契約を進めていることにお気づきの方も多いと思います。これは携帯電話の2年縛りを真似たもので、料金の高止まり、乗り換え防止、競争の阻害を狙ったものです。これを日本の多くの公益事業会社が導入したら、公共料金の高騰、高止まりが始まります。公益事業会社は携帯3社のような高収益会社に変身しますが、家計は間違いなく干乾びます。特に低所得者は生きていけなくなると思います。これを放置してきた総務省、公正取引委員会の責任は重大です。低所得者が生きていけなくなれば、民主主義社会では資本主義は終焉を迎え、社会主義体制に移行すること必然です。総務省や政府は分かっているのでしょうか。