前は天国、後ろは地獄
バスのリクライニングシートのことです。高速バスは殆どリクライニングシートとなっていますが、フルリクライニングされると前はベッドに寝る感じで天国ですが、後ろの席に座っている人は、前の座席の背もたれが膝に当たって痛い、背もたれが顔の10㎝くらいまで近づき圧迫される、背もたれと隣の席との間にある肘掛けで体が挟まれ身動きできない、という地獄の状態になります。これが目的地まで続くのです。なぜバス会社がこんな設備を導入し、自慢するのか不思議でなりません。人に迷惑をかけないというのは、日本人の道徳の基本だと思うのですが、バスのリクライニングシートは人を地獄に落として自分は天国を味わうという日本人の道徳の基本に反する設備だと思います。バス会社の経営陣は、この実体を経験したことがないのではないでしょうか。実際にフルリクライニングされたバスの後ろ座席に座ってみて欲しいと思います。これを経験すれば、フルリクライニングシートが如何に不条理なものか分かるはずです。
昔、バスの座席には灰皿が付いていましたが、リクライニングシートはこの灰皿みたいなものです。灰皿が付いているということは、タバコを吸ってよいということです。途中で吸うときは隣の人に声をかけて、などということが言われた時期がありましたが、これは本当に馬鹿げたことです。灰皿を付けてタバコを吸うことを許しているのだから、隣の人に声をかけることは無意味です。「吸わないで下さい」と言えば、「うるさい。本来声を掛けることなど必要ないんだぞ。親切で声を掛けているのに、その態度はなんだ」と逆切れされるのが落ちです。最近ネットニュースに元ライブドア社長の堀江貴文氏が新幹線で前の座席の人から「座席を倒しても良いですか」と声を掛けられたと怒りのツイートをしたという記事が出ていましたが、これはある意味正論です。彼の言い分は、「リクライニングできるようになっており、リクライニングするのは乗客の権利なのだから、声掛けは意味がない、無意味なことをするな」ということです。その通りだと思います。権利としてリクライニングできるようになっているのだから、後ろの人に声掛けするのは全く意味がありません。そもそも新幹線の座席間隔は、リクライニングしても後ろの席の人に迷惑にならないようにとってあります。バスとは全く異なります。
バスでの声掛けもリクライニングシートが設定されている限り無意味です。声掛けして断られたら、声を掛けた方が「うるさい。親切で言っただけのことだ。本来言う必要はないんだ」と逆切れするでしょう。
福岡からの高速バスでは、熊本便ではリクライニングシートを倒した人は見たことがありません。みんな倒された後ろの席の人の苦痛を知っていますから、これが普通だと思います。ところが大分・別府便は倒す人がかなりいます。それは温泉観光客が多いからです。それも倒している人は男女アベックが多いように感じます。女性は女王様気分で、男性はそのボディーガードのように振舞っていますから、後の人の迷惑などお構いなしです。私も何度かこの パターンで嫌な思いをしました。
しかし、この問題は、個人のマナーの問題よりもバス会社の姿勢にあります。今のフルリクライニングシートは、後ろの席の人の苦痛により前の人がいい思いをしているわけですから、日本人の道徳として許されない設備です。昔のバスの灰皿と同じです。
バス会社に理性があるなら、フルリクライニングできないようにするとか、座席の間隔を新幹線線並みに広げるとかの対策を採られることを切に願います。