ゴーン事件、司法取引の問題点が浮き彫りとなった
日産が先週2019年第三四半期決算を発表しました。2018年度 第3四半期累計9か月(2018年4月~12月)では、売上高は前年同期比で0.6%増となる8兆5784億円、営業利益は13.9%減の3137億円、当期純利益は45.2%減の3167億円。また、第3四半期累計9カ月のグローバル販売台数は2.1%減の402万3000台となっています。これを見ると、営業利益や当期純利益は相当落ちていますが、販売台数の落ち込みは小幅であり、ゴーン事件の影響はまだ大きく表れていなようです。
この発表で日産は、事前に報道されていたゴーン容疑者への未払いの報酬として約92億円を計上していました。前のブログでも書いたように、ゴーン容疑者との契約は、日産取締役会で承認されていないかぎり、日産との関係では有効とはならず、日産に支払い義務は生じません。西川社長が署名した契約書もあるらしいので、日産として支払い義務を引き受けるということなのでしょうか。こうなると株主から訴えられる恐れがあります。西川社長は、ゴーン容疑者への支払い義務は社内調査や検察の捜査を待たないと確定とは言えないが、支払い義務があると言う結論になるかも知れないので、保守的な考え方に基づいて計上した、私は支払うことになるとは考えていない、と述べています。この説明からも分かるように、日産の取締役会は、この契約を承認していないのです。なのに未払い報酬として計上するのは、検察がゴーン容疑者の報酬は確定しており、有価証券報告書に約92億円少なく記載していたとして起訴したからです。これは辻褄合わせとしか言いようがありません。
ルノーの弁護団は、ルノー従業員などに対する日産の調査のやり方に対して、「日産は検察の手先」だと非難しているようですが、この表現は間違いです。「日産は検察と一心同体だ」が正しい表現です。検察の主張が崩れれば、日産経営陣のやったことが背任に問われますし、ゴーン容疑者やケリー容疑者ばかりでなく、株主から巨額の損害賠償請求を受けることになります。このように司法取引は、司法取引に応じた方を検察と一体化させ、被疑者を有罪に持ち込むために一体行動をとることになります。この結果、司法取引による証言は、証拠能力がなくなると思われます。初めての司法取引案件であるゴーン事件は、司法取引の問題点を浮き彫りにしています。