NHK受信料が問題になったのは生活が苦しくなったから
7月の参議院議員選挙でNHKから国民を守る党」(N国党)が1議席を獲得し、NHK受信料問題がクローズアップされています。テレビ番組などでアンケート取れば、N国党が主張するスクランブル放送化に賛成する人の割合は8割に達しています。これはNHKを見る見ないにも関わらず受信契約を締結させ、高額な受信料(月2,230円など)をふんだくることに対する不満が大きいためです。賛成していない2割の人たちは裕福な世帯の人です。裕福な世帯の人から見ると受信料などたいした金額ではないのだから、今のままでいいではないかということだと思います。実は受信料は、裕福な世帯にとって有利な制度なのです。受信料は見る見ないに関わらず徴収されますから、実体はNHK負担金という税金です。税金なら所得に応じて負担することになり高所得者ほどたくさん負担することになるのですが、受信料を当事者間の契約に基づくものと偽装しているため、所得に関係なく同じ料金になっているのです。例えば年間所得1.000万円の人にとって年間の受信料の負担率は0.26%(2,230×12÷10,000,000×100)ですが、年間所得200万円の世帯の負担率は1.33%となります。これは、受信料負担は所得が低い世帯ほど負担感が重くなることを表しています。
ではなぜ急に受信料問題がこれ程関心を持たれることとなったかと言うと、低所得の世帯が増え、かつ家計の支出が膨らみ生活が圧迫されているからです。家計の支出が膨らんだ最大の原因は携帯電話料金です。携帯電話が普及し家族1人に1台になったこともありますが、それ以上に携帯電話3社がやみくもに家計から収奪しているからです。それは携帯電話3社の2019年3月期の決算を見れば分かります。売上高約13兆円、営業利益約3兆円、営業利益率約20%となっています。同じ公益会社である電力9社は、売上高約18兆円、営業利益約8,000億円、営業利益率約5%ですから、携帯電話3社が如何に暴利を貪っているかが分かります。監督官庁の総務省が家計負担を減らすことよりも携帯電話3社を儲けさせることに力を入れてきたことがその原因です。なんと総務省で通信部門を歩き事務次官にまでなった元官僚は携帯電話3社から多額の広告宣伝費が流れる大手広告代理店に天下りし、取締役に就任しています。これなど総務省と携帯電話3社の癒着を示す好例です。
携帯電話3社は多くの販売代理店を持ち、それらに多額の販促費を流していますから、営業利益3兆円以外にも超過利潤があります。約5兆円値下げしてやっと電力会社並みの営業利益率になると考えらえます。ようするに家計は携帯電話3社に5兆円も余計に搾取された結果、その分生活が苦しくなっているのです。そのため以前はそうでもなかった受信料負担がとても重く感じ、不満となって噴出しているのです。
政府は少数意見として無視しNHKを護る姿勢ですが、受信料に対する不満が生活苦から出ている限り、この問題が沈静化することはありません。次回の総選挙までに受信料制度を定める放送法が改正されなければ、自民党は大きく議席を減らすこととなります。またN国党のような1つの公約の党が躍進し、現在の与野党体制を破壊することになります。