上級国民の入り口は私立中高一貫校への進学

今年4月、87歳の元通産省工業技術院院長の車両が暴走し、母子2名を死亡させ、8名の重軽症者を出したにも関わらず、元院長は逮捕されなかったことから、警察は上級国民は逮捕しないのかとネット上で騒ぎとなりました。法曹関係者によると逃走の恐れがないから逮捕されなかったとのことですが、同様な事例では逮捕されるケースが多かったので、やはり元工業技術院院長であったことが影響したと考えるのが妥当です。

このように経歴が原因で逮捕あるいは起訴されなかったと思われる事例が増加しています。今年5月には森友事件で文書改ざんを命じた財務省理財局長の佐川氏が不起訴になっています。また日産のゴーン元会長が起訴された事件では、起訴原因の1つである有価証券報告書虚偽記載で有価証券報告書の提出責任者であった日産の西川社長は不起訴になっています。元院長、佐川氏、西川氏はいずれも東大卒です。検察のトップラインは東大法学部が占めていることは衆知の事実ですが、どうも地検トップラインで東大同窓は余程のことがない限り起訴しないという暗黙の了解があるように感じます。東大同窓=上級国民と考えているのかも知れません。

経済の分野では東大同窓とは異なる上級国民クラブが形成されています。日本では旧財閥系企業が就活の最高峰となりますが、旧財閥系企業では社員の子弟をグループの企業に優先的に入社させているようです。これは身元が確かだし、親から企業文化を受け継いでおり会社に馴染むのが早いと言うメリットもあります。そしてこれらの企業に勤める親の子供は中学や高校から慶応または早稲田の系列校や開成や麻布、武蔵などの名門中高経由の慶応または早稲田卒が多数を占めます。地方には各県に旧制中学や藩校に繋がる名門高校がありますが、旧財閥系企業では、地方の名門高校は所詮田舎の高校であり、東京の名門私立中高一貫校出身より下と見られています。彼らは中高大と10年間同じ環境で育っており、同窓意識が強く、仲間同士で仕事がやり易いのです。こうして会社でも彼らが多数派を形成し、経営陣の多くを占めて行きます。そうなると採用や昇進でも同窓を優先するようになります。慶応OBが一度会社のトップに就くとその後続けて同じく慶応OBの後輩にトップの座を譲って行くのは良く見られる現象です。こうして企業社会では、慶応OBが強力な集団を形成しています。福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という言葉は、慶応に集った人たちは決して下級国民にはしないという宣言です。そのために慶応は主としてOBの子弟の教育機関として小学校から大学まで揃えています。現在系列高校からの内部進学や指定校からの推薦入学は定員の5割弱のようですが、今後はこの割合を高め、一般入試による入学者を少なくする方向にあると思われます。慶応が欲しいのは、成績が良い学生よりも上級国民の子弟なのです。

最近私立の有名中高一貫校は、高校からの募集を廃止し、中学から入学した者を6年間一貫して教育しようとしています。これは授業の進捗程度が違うということもありますが、中学から入学してくる生徒は確実に上級国民の子弟だからということもあると思われます。こう見て来ると私立中高一貫校への進学が上級国民の入り口になっているようです。