農水省の官民ファンドは背任罪が成り立つかも?

農水省所管の官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)」は2019年3月末で92億円の累積損失を抱えているとして注目されていましたが、11月21日江藤農水大臣は、廃止の方向で検討すると表明しました。

この問題は、2019年6月の新聞報道で明らかになりました。そのときは、A-FIVEは2019年3月末で累積損失が92億円まで膨らんでいながら、今年度の投資額を前年度の9倍となる110億円とし、更に今後8年間で計700億円を投じる計画であり、損失拡大が懸念されるとの内容でした。江藤大臣によると、2019年9月までの今年の投資額は16億円で、110億円はとても無理であり、2020年3月末の累積損失が115億円になる予想とのことです。

6月の報道で2017年度末までの投資案件全体の3分の1を超える47件で減損処理に追い込まれたとなっていましたので、2017年末までの総投資件数は140件程度(47×3)となります。2018年度の投資額は12億円となっていますので、2013年のファンド設立以降の投資額は70億円程度(12億円×6年間)と考えられます。農水省は「企業の成長後に株を売却して利益を出すファンドの特性上、当初の赤字は想定内」(減損処理が出て来るのは仕方ない)と言っているとのことでしたが、投資についてはその通りです。スタートアップ企業であれば最初の3年間は赤字が続き、出資金を食い潰しますので、出資金(投資額)は減損処理となります。従ってA-FIVEの投資額はほぼ全て減損処理されていてもおかしくありません。問題は4年目以降損益が黒字化し、累損を解消するような企業に投資しているかどうかです。多分この分野ではそんな企業は殆ど無いと思います。赤字が膨らみ資金繰りに困り、A-FIVEが融資する羽目になり、損失を膨らませたのではないでしょうか。そうでないと累損92億円にはならないと思われます。そうなると投資の失敗を繕うために融資を行った可能性があり、背任の疑いが出てきます。

2019年度の投資計画は110億円の所、この9月末で16億円であり、「計画の達成はとても無理」(江藤大臣)ということですが、110億円というのはそもそも不可能な数字でした。前年の投資金額が12億円ですから、その10倍の投資を行うことが不可能なことは誰だって分かります。これが計画として承認されていることがおかしいのです。今年6カ月間に行った投資額が16億円に留まったことは不幸中の幸いですが、前期の投資が年間12億円だったことをかんがえると、この投資も無理をした可能性が高く、ほぼ全額が損失化すると考えれます。と言うより、この分野で投資を行い、株式を売却して利益を出すことがそもそも不可能なのです。出資したら全損になるのが結論なのです。 A-FIVEでは、このことを承知の上で投資、融資が行われた可能性があります。そうなると損失化することを認識した上相手先企業の利益を図るため投資、融資が行われた可能性があり、実行者には背任罪が成立する可能性があります。ファンドで出資金額の9割以上が損失化したら、それはそういう認識があったとして背任罪に問われてもおかしくないと思います。この問題は刑事事件化してもおかしくありません。