農村は今でも人口過剰

日本は人口減少時代に突入しており、人口は、2020年5月1日現在の1億2,590万人から2060年度8,674万人へと約4,000万人減少すると予想されています。現在は地方から都市への人口移動が起きており、地方の市町村は軒並み大幅な人口減少となっています。そのためこれらの市町村は都会からの移住者の獲得に力を入れています。コロナのため職を失った若者を対象にしたオンライン移住相談会を盛んにやっているようです。しかし、これらの地方の人口が減少した要因は仕事がないことであり、これが解決されない限り、移住者を受け入れても定住には結びつかないと思われます。地方が先ずやるべきは仕事作りなのです。

しかし、人口減少が続く中では工場の進出は容易ではなく、大きな職場の確保は困難です。地方の場合、やはり農業が大きなウエートを占めており、農業で豊かな生活ができる基盤作りが不可欠だと思われます。日本の農家で一番割合が大きいのは米作農家ですが、1農家当たりの耕作面積は2ha未満が8割となっています。10a当たりの米の収量は約10俵であり、1俵当たりの米価が約13,000円ですから、2haからの収入は260万円となります。ここから肥料代や農薬代、農業機械代、農協手数料などの諸経費を差し引くと200万円も残りません。従ってこれ以外に畑作や果樹、養豚などを行ったり、或いは本業は勤め人で農業は副業という人が多くなります。これでは豊かな生活は展望できず、離農、都会への移住となるのは当然です。

これから都会の若者を地方に移住させるとなると、仕事は農業になると思われます。農業はきついと言いますが、都会での工場勤めのきつさや会社員のストレスの強さを経験していれば、それはあまり感じないと思います。他人に煩わされることなく自分のペースで仕事ができることから、むしろ快適と感じる人が多いのではないでしょうか。問題は収入です。今の農家のように2ha未満の農地で農業を営んで限り、低収入に耐えられずいずれ離農は避けられません。米作農家の場合、最低5haの耕作面積が必要であり、将来的には10haを標準にする必要があります。5haなら約500万円の所得が可能ですし、10haなら1,000万円前後の所得が可能です。こうなると農業は魅力的な職業となります。

現在ほとんどの農家が田植え機、コンバインなどを所有しています。耕作面積からすると明らかに装備過多です。機械化が仕事を楽にすることだけに寄与し、逆に収入の減少に繋がっています。今の装備なら最低5haの米作りをしないと割にあいません。また10haの米作りも可能です。このように5ha,10haの営農が可能な装備は持ち合わせているのです。しかし農家が高齢化し、ここまで拡大する意欲がなく、耕作面積の拡大が実現していません。それに農地は先祖代々受け継いできたものという意識がありますから、なかなか手放しません。そのためなかなか大規模農家に移行しません。

こう考えると、人口減少で大変だと言う地方、とりわけ農村はまだまだ人口が多すぎると言えます。1農家当たりの耕作面積を10haとして、農村の全農地の面積を10haで割った数がその農村の適正農家数となり、それに家族の数を掛けた数が適正人口となります。この計算に基づくと農村の人口は今の5分の1程度が適正ということになります。農村はこれに向けまだまだ人口減少が続くことになります。