MVNO回線使用料の値下げを先送りにした武田総務大臣の大罪

格安携帯電話事業者(MVNO)の団体は、1月19日に開催された総務省の有識者会議「接続料の算定等に関する研究会」において、MVNO向けの接続料や音声卸料金の引き下げを要望したという報道です。携帯電話大手3社(MNO)による「廉価プラン」(NTTドコモのahamo、auのpovo、ソフトバンクのSoftBank on LINE)の発表をうけ、現行の接続料や卸料金では、これに対抗するサービスをMVNOが実現することが極めて困難であり、MNOとMVNOが同じ条件で公正に競争するため、MNOに緊急の値下げを行うよう指導して欲しいと要望しています。

この問題はドコモが値下げを発表した昨年12月から顕在化していました。MNOの営業利益は各社1兆円程度あり、営業利益率は約20%あります。これから携帯回線コストは相当安いことが分かります。しかしMNOはMVNOに高い接続料や音声卸料金を設定し、MVNOが低料金を設定し、MNOから顧客を奪うことを阻止してきました。それにMNOのうちソフトバンクとauは、Y!モバイルとUQモバイルというMVNOの子会社を設け、MVNOの防波堤としてきました。Y!モバイルとUQモバイルは親会社と同じ回線を使用し、回線コストは親会社と同じですから、MVNOが太刀打ちできるはずがありません。当時MVNOの楽天モバイルを持っていた楽天の三木谷社長が「これでは奴隷と一緒」と言う状態でした。MVNOが総務省の担当部局に要望しても埒が明かなかったのですが、2019年9月に高市総務大臣が誕生し流れが変わります。その年の11月に日本通信がドコモの音声卸料金につき大臣裁定を申請します。これには高市総務大臣側から日本通信に大臣裁定を申請するように働きかけがあったと想像されます。高市総務大臣は、翌年の2020年2月には引き下げが妥当とする大臣裁定案を出し、電気通信紛争処理委員会に諮問しています。通常なら4月頃までには同委員会の承認が得られ大臣裁定が確定し、ドコモに新卸料金を設定するよう命令が下されるところでしたが、コロナ感染拡大により6月にずれ込みました。この新料金の回答期限が2020年12月29日だったのですが、ドコモはなんと回答しなかったのです。その理由として時間が足りないと述べているということですが、これは理由になりません。通信回線の原価は常に分かっていますから、いつでも回答できます。ドコモがこのような態度に出たのは、その前にahamoでこれまでの料金よりはるかに割安な料金を発表し、武田総務大臣の顔を立てたことから、武田総務大臣が大目に見てくれるとの確信があったからと思われます。というより、事前に総務省の担当部局を通じて武田総務大臣には回答しない旨が告げられていたと思われます。その証拠にこれが明らかになっても武田総務大臣は一切反応していません。もし自分が出した裁定がこのように無視されたら通常激怒します。高市前総務大臣が出した裁定であり、自分は関係ないという姿勢だったと思われます。

そもそも武田総務大臣は就任早々の昨年10月、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表し、MVNOの接続料については今後3年間に2019年度から5割引き下げると発表しています。本来接続料は常にコスト+5%の利益程度に設定されるべきものであり、この発表は接続料の引き下げを3年間先送りすることが狙いです。これによりMNOは3年間5割の値下げを先送りし、その分利益を社内に確保できます。この発表は総務省の担当部局が用意したもので、武田総務大臣は承認し発表しただけだと思われますが、最近ネット上で指摘される武田大臣の無能さの表れでもあります。高市総務大臣ならこんな決定許さなかったはずです。

このように高市前総務大臣の妙手により切り開かれたMVNO接続料の値下げの道筋が武田総務大臣により台無しになっています。武田総務大臣の罷免と高市前総務大臣の復帰が必要です。