国債は国の借金と国民を騙す麻生財務大臣

麻生財務大臣は22日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルスによる経済悪化を受けた定額給付金の再支給の可能性を問われ「(給付金は)国の借金でやっている。後世の人に借金を増やすのか」と述べ、改めて実施に難色を示したと言う報道です。これに対してネットでは麻生大臣に対する批判が渦巻いているようです。「自粛と補償はセット」「国民の命と生活を守るのは政府の仕事」などの正当なコメントの他麻生大臣の言い方が横柄との毎度おなじみのコメントも多いようです。

私は昨年5月、1回目の支給が話題になったとき、「コロナ対策の現金給付、一律給付ではなく必要な人に必要な額を支給すべき」という提案を内閣官房と財務省にメールで行い、一旦は採用されたこともあり、もしやるなら今でもこの案が良いと考えています。ここではこの是非について述べるのではなく、麻生大臣が言っている給付金の原資である国債は「国の借金」という嘘を暴きたいと思います。

国債が国の借金というのは、半分は正しく、半分は正しくありません。給付金の原資について言えば国(財務省)が国債を発行し、市場で引き受けられても、直ぐに日銀が買い入れることが想定されています。こうして日銀が買入れ保有している約530兆円(2020年10月末)の国債は、国の借金ではありません。従って定額給付金の原資は国の借金ではありません。その他銀行や生保・損保などの投資家が持つ約470兆円(国債残高を分かりやすく1,000兆円と想定)は国の借金です。国の借金か借金でないかは、国債を引き受けた原資と返済しなかった場合に強制取立(訴訟)がおこなわれるかどうかで判断できます。日銀保有の国債の原資は、日銀が印刷した紙幣です。従ってコストは印刷代のみです。だから返済されなくても痛くも痒くもありません。銀行等のように預金者などから預かった他人の資金ではありません。だから国債が期日に返済されなかったとしても、日銀は強制取立をすることはありません。それに日銀の出資口数(株式みたいなもの)の55%は財務省が持っています。即ち日銀は財務省の子会社のようなものです。従って、財務省が借金を返済しなかったとしても日銀が財務省を裁判所に訴えることはありません。もし日銀が訴えようとしたら財務省は日銀の役員を全員首にして新たに言いなりになる人を任命します。このように日銀保有の国債は実質的に借金とは言えないのです。他方銀行などの投資家が持つ国債は、預金者などの資金で購入したものであり、国債の償還がないと預金者などに返還できなくなるので、銀行などの国債保有者は裁判所に訴えてでも償還を求めますから、典型的な借金です。

定期給付金の原資になる国債は、日銀の直接引き受けが法律で禁止されているため、一旦市場で銀行などの投資家が引き受けますが、その後日銀が買い入れることが想定されており、実質的には日銀が引き受けたことと同じです。こうでもしないと今後GDP(約530兆円)の2倍にも達した国債は、消化が困難になると予想されます。

このように定額給付金の原資となる国債は借金ではなく、麻生財務大臣が言っていることは嘘です。日銀保有の国債はいずれ返済不能が確定し、債務者(財務省)と債権者(日銀)が実質的に同一なことから法律の規定(民法520条)により混同により消滅します。親に1億円の借金がある子供がいたとして、親の死亡により相続したら1億円の借金がなくなるのと同じ原理です。

だから国債はいくらでも発行してもよいかと言うとそんなことはありません。日銀保有の国債を混同で消滅させる事態となったら、国内的には問題ないのですが、国際的に大混乱になると考えられます。それは国債が混同により消滅したというけれど、実質的には日本が借金を返せなかったということであり、国際的には日本が破綻したと考える人たちがたくさんおり、評価が定まるのに時間がかかるからです。この間円は暴落し、国際決済に使えず、かつドルなどとの交換も停止されると考えられます。このように一時的にパニックが想定されます。従ってこの状態はないことが望ましいのです。だから麻生財務大臣や財務省は嘘だとわかっていても国債は国の借金と言い、国民に危機感を持たせているのです。従ってこれを「嘘も方便」と見ることもできますが、ちゃんと説明した方が良いと思います。