携帯3社が作った不自由契約の解消は道半ば

携帯3社の9月中間決算が出揃いました。純利益を見るとKDDIが3,614億円(-3.1%)、ソフトバンクが3,072億円(-2.5%)、NTTドコモが3,449億円(-11.9%)となっています。3社合計すると1兆135億円となります。同じ公益事業である電力9社の9月中間決算の純利益は約5,800億円ですので、4,000億円以上多くなっています。各社とも料金値下げの影響が出たと言っていますが、その額は3社合計で約800億円に過ぎず、年間で1,600億円、売上の約1%に過ぎません。携帯3社の純利益は、同じ公益事業として電力9社並みが妥当であり、携帯3社は6カ月で4,000億円,年間では8,000億円の値下げが求められます。携帯3社の中には、今後利益が減少すると5Gの設備投資に影響し、5Gの普及が遅れるとブラフを咬ませる企業がありますが、これは嘘です。携帯3社は5G投資額とほぼ同額の減価償却費(これまでの設備投資額を期間配分した額)を計上しており、これが利益から控除された額が今の純利益です。減価償却費は費用とはなっていますが、かって支出した現金の一部であり、現金が出て行く費用ではありません。即ち、現金で見れば純利益意外に減価償却費相当の現金が内部に留保されていることになります。従って3社の9月決算における現金は、純利益1兆円+各社の減価償却費約2000億円(想定)×3=1兆6,000億円となります。各社の設備投資額は年間約4,000億円であり、ほぼ減価償却費見合いです。ということは利益が0にならない限り設備投資は可能ということになます。騙されないようにしましょう。

ということで携帯3社の値下げはまた始まったばかりということになりますが、それでも3社の解約率は0.5%程度であり、乗り換えは進んでいません。それは3社と総務省が作り上げた携帯業界特有の不自由契約が幅を利かしているからです。最も特徴的だった2年縛りと約1万円の解約金契約は、2019年に解約金額が約1,000円までとなりましたが、これは2019年9月以降の契約からの適用となり、多くの旧契約は約1万円のまま残りました。これでは乗り換えが進まないことは改定時点で分かっていましたが、携帯3社側に立つ総務省がわざと残したことは明白でした。これについてもやっと見直されることとなり、10月1日からNTTが解約金(約1万円および約1000円)を全廃し、ソフトバンクは2022年1月末、KDDIは2022年3月末までに廃止すると発表しています。

これで不自由契約がなくなるかというとそんなことはありません。それは光回線契約やホームルーター契約に2年縛りや3年縛りと高額な解約金が残されているからです。携帯電話の2年縛り契約と高額な解約金が乗り換えを防ぎ、料金を高止まりさせる手段であることから廃止されたのだから、同じ目的である光回線契約やホームルーター契約の2年縛りや3年縛りも廃止されるのが当然となります。しかし携帯3社の味方である総務省はわざと廃止しません。そこでここは公正取引委員会の出番だと思われます。携帯3社が持ち込んだ2年縛りや高額解約金、高額な手数料、ネットでの解約を認めないなどの悪辣な契約形態は、日本の多くの業界で真似され、消費者を苦しめています。携帯3社で禁止された契約形態は、消費者庁で法律を制定して全業界に適用されるようにする必要があります。

今回携帯電話単独の解約金は撤廃されましたが、携帯3社は光回線やホームルーター契約の2年縛りや3年縛りは禁止されていないとして、これらと携帯電話の契約をリンクさせ、2年縛り契約と同じ効果をだそうとしています。更には電気やガスの契約を絡めて雁字搦めにして乗り換えできないようする動きを強めています。このように携帯3社が作り上げた不自由契約の解消は道半ばであり、公正取引員会、総務省および消費者庁が一体となって完全解消に取り組む必要があります。