東京証券取引所の改革は日本銀行の上場廃止から

現在東京証券取引所(以下東証」)は市場区分の見直しを進めています。現在の市場第一部、市場第二部、マザーズ及びJASDAQ(スタンダード・グロース)の4つの市場区分がありあますが、この区分には次の2つの問題があるようです。

1.各市場区分のコンセプトが曖昧であり、多くの投資者にとっての利便性が低い。
具体的には、市場第二部、マザーズ、JASDAQの位置づけが重複しているほか、市場第一部についてもそのコンセプトが不明確。

2.上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けが十分にできていない。
例えば、新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低いことから、上場後も新規上場時の水準を維持する動機付けにならない。
また、市場第一部に他の市場区分から移る際の基準が、市場第一部への新規上場基準よりも緩和されているため、上場後に積極的な企業価値向上を促す仕組みとなっていない。

この問題の解決のため東証は、2022年4月4日に現在の市場区分を「プライム市場・スタンダード市場・グロース市場」の3つの市場区分に変えるということです。

プライム市場は、グローバルな投資家との対話を中心に据えた企業向けの市場

スタンダード市場は、公開された市場における十分な流動性とガバナンス水準を備えた企業向けの市場。

グロース市場は 高い成長性を有する企業向けの市場。

となっています。理屈は良く分かりますが、実際に区分けは難しいでしょうし、区分けされる企業に重大な影響を与えます。

これだけ重大な市場区分の変更をするのなら避けて通れないことがあります。それはこの機会に日本銀行の上場を廃止することです。「え、日銀って上場しているの?」と驚かれる人が多いと思います。ヤフーファイナンスで銘柄コード8301で株価を検索してみて下さい。ちゃんと日本銀行の株価欄が出て来ます。そして12月24日には100単位成立し、価格(終値)は25,600円になっています。しかし良く見て行くと普通の会社なら掲示されている決算情報がブランクになっています。これだけでも十分おかしいと思います。

日銀は普通の公開会社のような会社法に基づく株式会社ではありません。日本銀行法という特別法に基づき設立された認可法人です。資本金1億円ですが、株式ではなく出資口数(1口100円。売買単位は100口1単位)となっています。そして日銀の出資口数の55%は財務省が持っています。その他の40%は個人となっています。株主総会に代わり出資者総会があるようですが、議決権はないようです。やっているのかどうかも分かりません。出資者の経営参加は禁止されており、配当も資本金の5%(500万円)に制限されていますから、出資口は定期預金のようなものとなります。日銀は多額の国債を保有しているから、その金利収入(2018年度経常利益は約1兆2,000億円)で内部留保が蓄積し、1口当たりの純資産(残余財産配分)が巨額になるだろうと思いますが、日銀は運営に必要な経費と配当を差し引いた利益は国庫に納付することになっており、利益がそのまま蓄積することはありません。

このように外部出資者としてのメリットは配当だけとなります。これでは営利法人ではなく、普通なら株式公開は認められません。公開したくても証券会社の公開引受部に相手にして貰えません。それが認められた(1983年)のは、証券業界が財務省(公開当時は大蔵省)の管轄下にあり、大蔵省が公開を認めよと迫ったからだと思われます。即ち裏口上場です。では何故そこまでして大蔵省は日銀を公開会社にしたかったのでしょうか?それは日銀には設立当初から国債を保有する役割が予定されており、そのためには日銀が政府(国)から独立した法人でないと困るのです。上場は日銀が独立した法人であることを主張するには都合が良いのです。国の機関ならば、国債の発行者(債務者)が国債の引受人(債権者)となって、債務者と債権者が同じ主体になってしまい、経済原則が成り立たなくなってしまいます。

そういうことで日銀は東証の公開基準に全く適合しておらず、今回の3つの市場区分のどこにも入りません。従って東証が政府から独立した法人ならば、日銀を上場廃止にするしかありません。そもそも世界の中央銀行で上場しているのは日銀だけであり、上場廃止により日銀も世界の中央銀行と同じ位置付けとなります。これ無しに真の東証改革はありえません。