サムスン電子平均年収1.440万円が示す韓国の実力

5月13日日経が韓国で賃金引き上げのドミノ現象が起きていると報じました。サムスン電子の国内従業員約11万人の平均年収が前年度比約13%増の約1,440万円に達し、他社も負けずに追随しているということです。そのためボーナスは10カ月に達している会社も珍しくないとのことです。(今年2月の韓国紙総合ニュースでは約1,350万円となっていますが、ウォン・円レートの変動によるものと思われます。)

私は昨年3月29日の「韓国サムスン電子平均年収1,220万円が示す日韓逆転の現実」というブログの中で、次のように書きました。

「3月24日の朝鮮日報によると、サムスン電子(以下サムスン)の韓国国内社員10万9,490人の昨年の平均年収は1億2,700万ウォン(約1,220万円)で、前年の1億800万ウォン(約1,030万円)よりも17.6%アップしたとのことです。2位は約1,160万円のSKテレコムで、以下POSCO 約940万円、SKハイニックス約900万円、LG化学約890万円、起亜約870万円、KTと現代自動車 約840万円、LG電子約820万円、LGテレコム約760万円)、LGディスプレー約670万円の順だったとのことです。そして1社を除き前年を上回っているとのことです。」

2021年度もコロナ禍の中これらの会社は順調に業績を伸ばしたようです。

これまで日本人は韓国経済を日本より下とばかり思い込んでいましたが、とんでもなく上を行っていることが分かります。韓国大企業の大卒初年度の年収は400万円を超えると言うことですから、日本人の平均給与所得並みと言うことになります。サムスン電子の場合、韓国内の従業員は約11万人いてその平均年収が1,440万円ですから驚きです。日本のトヨタ従業員の2020年平均年収が約865万円となっていますので、その約1.7倍あります。サムスン電子の2021年度の業績は、売上高約27兆円、営業利益約5兆円です。これに対しトヨタは、売上高は約31兆円、営業利益は約3兆円となっています。売上高はトヨタが約4兆円多いですが、営業利益はサムスン電子が約2兆円多くなっています。それに留意すべきは、サムスン電子は従業員に平均約1,440万円の年収を払っての営業利益であるということです。トヨタが従業員にサムスン電子と同じ年収を支払ったとすれば、営業利益は3兆円以上の差が付くと思われます。

サムスン電子の利益源は、世界トップにあるDRAMやフラシュメモリーなどの半導体です。世界的な半導体不足の中で取り合い状態となり、価格が大きく上昇し、売上高および利益が伸びたようです。サムスン電子は、テレビでも金額基準で世界シェア29.5%、数量基準で19.8%と、金額と数量で共にトップにあります。特に強いのが高級品分野で、2,500ドル以上のテレビ市場では金額基準で42.1%、80インチ以上の超大型テレビ市場では44.9%のシェアを持っているとのことです。スムスン電子の品質が世界で高く評価されていることが分かります。そしてテレビ市場の世界2位は同じく韓国のLG電子で、金額シェア18.5%となっています。ということは韓国2社が金額ベースで世界テレビシェアの48%を占めていることになり、韓国のテレビ技術は世界一と言えます。半導体でもSKハイニックスがメモリー半導体でサムスンに次ぐ世界2位の地位にあり、2021年の業績は売上高約4兆3千億円、営業利益約1兆2千億円となっています。このように韓国の場合、1つの商品分野で世界の1位と2位を占める企業が存在し、高いシェアを占めているのが特徴となっています。

韓国の企業がこのように強い原因は、開発投資額が大きいことにあると言われています。韓国全体の開発投資額はGDPの4.23%で、世界主要国でトップにあります。一方日本のそれは3.3%程度であり、この差が日韓企業力の差になって表れているようです。

数年前米国の著名な投資家で現在はシンガポールに移住しているビル・ロジャース氏が著書や講演で「今アジアで投資するなら絶対に韓国だ。日本には投資する理由が見当たらない」と言っており、当時は「この人おかしいんじゃないの」と思っていましたが、その理由が良く分かりました。私を始めとして大部分の日本人が韓国の真の実力が分かっていなかったようです。韓国の工業技術はアジアNO.1であり、ひょっとしたら世界NO.1かも知れません。

韓国がこのような地位に就いた原因は研究開発投資額が多いこと以外に2つあります。1つは、韓国の歴代政権が国内市場の小ささを理由として、輸出拡大政策を進めたことです。そのため製品開発も海外市場で売れることを主眼にして開発されています。この結果韓国の輸出がGDPに占める割合は約42%に達しています。これはドイツの約48%に次ぐ高さです。一方日本は1985年のプラザ合意による円高以降輸出拡大から内需主導に転換し、日本企業の製品開発も国内で売れることが主眼です。その結果、日本の輸出がGDPに占める割合は約18%と韓国の約4割程度です。そして輸出総額も日本が約80兆円のところ韓国は約66兆円(日本の約8割)に達し、今の勢いではあと3年程度で日本を抜くと思われます。

2つ目が業績連動型報酬を徹底していることです。サムスン電子の1,440万円の年収も業績連動のボーナス(10カ月以上)の割合が高いようです。2017年のサムスン電子社長の年収は24億円ですが、固定給与は1.8億円であり、目標達成インセンティブ約8億円、特別賞与15億円となっています。このように頑張れば報われる報酬体系になっていることが、韓国企業躍進原因の1つであることは間違いありません。一方日本はと言うと、トヨタの豊田社長の年収が約4億円であり、フランス人副社長(10億円以上)より少なかったことで分かるように、報酬に内外格差を設けており、国内は豊田社長の報酬を押さえることで日本人役員の報酬や日本人従業人の年収を押さえています。これではサムスン電子と比べて役員や従業員のやる気に差が出るのは当たり前です。

このようにサムスン電子の高い年収は、国家と企業の合理的政策の結果であり、日本は学ぶ必要があると思われます。