iPS財団は市民講演会が必要では

ヤフーで検索しているとノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大学教授が理事長を務める京都大学iPS細胞研究財団(以下iPS財団)の寄付を求める広告を良く見かけます。2012年に山中教授がノーベル生理学・医学賞受賞後政府は、山中教授の研究に10年間に100億円の予算を付けることを約束しました。その受け皿となったのは2010年4月に設立されていた京都大学iPS細胞研究所でしたが、10年間の期限が切れ予算が減少することとなったことから、基礎や実用化の研究をiPS細胞研究所が、細胞製造や貯蔵をiPS財団がと分担することとしたようです。iPS財団設立に当たってはiPS細胞研究所が寄付で集めていた資金をiPS財団に移して基本財産としたようですが、iPS財団としては基本財産を食いつぶして終わりにするつもりはなく、そのため新たな寄付集めに力を入れているようです。

iPS財団を組成できたということは、分離前のiPS細胞研究所でも大口寄付をする企業や個人が居たということであり、iPS財団でもある程度の寄付のベースはあると考えられます。問題はこれを如何に広げていくかと言うことになります。

寄付集めは大企業を中心とするのが効率的ですが、iPS細胞で利益を受けるのは個人であり、また企業より個人の方が母数が各段に多いことから、個人からの寄付を増やして行く必要があります。そのためにヤフーの検索ページなどに広告を出しているのだと思いますが、寄付する可能性が高い高齢者はインターネットをあまり見ないという特徴があります。そのため別の寄付集めの手段が必要です。

私は全国でiPS細胞に関する講演会を開催するのが良いと思います。講演会を開催しても人が集まらないのではと思われるかも知れませんが、集まります。iPS細胞に期待している人は、例えば黄斑変性症で視力を失った人であり、骨髄損傷で身体が不自由になった人など現在の医学では治癒が困難な人たちです。この人たち自身や関係者は、なんとか治せないものかと専門家を訪ねたり医学書を調べ上げています。そのためiPS細胞についても驚くほど詳しい人がいます。20年位前私が東京でがん治療の講演会に出席したときのことですが、有名な大学教授の講演が終わり会場から質問を受けることとなりました。一般市民向けの講演会でしたので質問は出ないか、出ても幼稚な質問だろうと思っていたら、とんでもありませんでした。次々に手が上がって専門書には書いていないような質問が出るのです。それは調べられることは調べ尽くしたらこの質問が残ったと言うような内容でした。そのため大学教授とのやり取りは専門家同士のやり取りにも負けない内容となっていました。大切な人の命を何とか救えないかと必死に勉強したら、専門家にも負けないレベルに行きつくようです。地方で講演会を行えばこういう人が多数集まるはずです。こういう方は研究の重要さも分かっているので継続的な寄付者となります。寄付を続けてもらうには、やはり内容を理解してもらうのが一番であり、それは講演会の開催によってのみ可能だと思われます。地方には山中教授の講演を聞きたくても聞けない人がたくさんいますので、是非1度試しにやって見てください。