技術者になるなら高専経由大学編入がエリートコースになる

最近大学進学には職業高校経由が良いのでは、と考えています。大学は専門学部ごとの募集となっており、高校で大学専門学部で学ぶことを事前に学んでいた方が学びが深くなります。これは工業高等専門学校(高専)から大学に進学する場合、3年次編入になることから、大学もそう認識していることが分かります。工業高校や商業高校卒業者の場合、教養課程では高校普通科卒業者と差は出ない(或いは劣る)かも知れませんが、専門課程になると顕著な差が生じると思われます。工学部の場合、大学4年修了では企業で使いものにならず、修士課程に進むのが普通になっています。医学部や歯学部、薬学部などは6年制になっていますが、工学部も実質的に6年制になってきています。これが工業高校や高専出身者なら4年制でも十分かも知れません。このように大学が専門学部制になっていれば、高校はそれに繋がる職業高校が合理的となります。文系でも公認会計士や税理士になるのであれば、商業高校で簿記1級や税法のいくつかの科目に合格しておれば、大学在学中に公認会計士や税理士の試験に合格する可能性が高まります。

私がこう考えるようになったのは、今年の2月長崎県の諫早商業高校の情報科を卒業する39名のうち28名が「基本情報技術者試験」という国家試験に合格したという報道をヤフーニュースで見てからです。と言うのは私もこの試験を受けようと1年くらい勉強していて、この試験の難易度を知っていたからです。この試験は午前試験(2時間半)と午後試験(2時間半)があるのですが、午後試験が難関で合格率は20~30%です。午後試験のレベルは大学情報科の2年生以上のレベルだと思われます。企業の情報部門配属者には受けるよう推奨されていて、会社員の受験も多い試験です。これに合格しないようでは企業の情報部門でキャリアを重ねるのは無理と言う判断になると思われます。この試験に39名中28名が合格(72%)したというのは、この試験の合格率20~30%からすると驚異的な数字です。大学情報科並み或いは以上の情報教育がなされていることが伺えます。この上の試験に当たる応用情報技術者試験に合格した生徒もいるようで、この生徒は大学に進学するようです。この資格は大学工学部情報部門の推薦入学の際に考慮される資格に挙げられていることが多く、この資格を持っているということは大学での情報教育に耐えられることを意味しています。

高専については、もっと早くからこのことを考えていました。先ず高専出身者に優秀な人がいると思ったのは、今から20年くらい前です。当時私はベンチャー企業への投資の仕事をしており、バイオや創薬ベンチャーを担当していました。創薬技術としてRNAが注目され始めたとき、この分野で注目されていた東大工学部化学科のT教授にお会いしました。T教授は佐世保高専出身だったのです。高専卒で東大教授ですから驚きです(ただし米国の大学を卒業している)。どうも高専出身は実験技術(実験プロトコルの組立、機器の調達、手技など)に優れているようです。2020年に中国人差別ツイートで東大大学院情報学環特任準教授を解任されたO氏(33歳)は福島高専(筑波大編入、東大大学院博士課程修了)出身でした。O氏の東大での指導教官は日本のAI研究の第一人者ですが、高専出身者は研究成果が何に(どこに)使えるか直ぐ分かると言っています。最近もセブン銀行の社長に高専(釧路高専)出身者のM氏が就任したという新聞報道がありました。たぶん銀行と言う名前が付く会社で社長に高専出身者が就任するのは初めてだと思われます。セブン銀行の場合、約26,000台のATM使用料が収益源であり、ATMシステムに強い人が社長になるのは当然かもしれません。それでも東大工学部や早慶理工学部出身者を差し置いての就任ですから、優秀さが伺えます。M氏はNECの子会社から1998年セブン銀行に転じ、以来ずっとセブン銀行のATMの開発に携わってきたということですから、日本で一番ATMに詳しい人かも知れません。

現在進学では私立中高一貫高校が東大や医学部進学者の大部分を占めるようになっていますが、これは中学から才能別の教育を実施するのが有効であることを示しています。これからは中学生で将来技術者になると決めた子供は、高専経由で大学に進学するのがエリートコース(才能を如何なく発揮できる経路)になると思われます。