京都の企業家は今も戦国時代を生きているようだ

日本電産での社長交代劇について、ヤフーニュースの書き込みを見ると永守会長を非難する書き込みが圧倒的です。日本電産は時代遅れのパワハラ企業、永守会長には老害という指摘が多いように思われます。もしそれが事実なら日本電産は今のような優良企業にはなっていません(2022年3月期:売上高1兆9,181億円円、営業利益1,714億円利益)。日本電産を悪く言う人で、自分の会社が日本電産の業績を上回っている人がどれだけいるでしょうか。多分大部分の人の会社が日本電産の足元にも及ばない業績だと思われます。不況になったとき、日本電産の良さを嫌と言うほど知ることとなります。日本電産は間違いなく日本の優良企業の1つであり、こんな会社を作りあげた永守会長は日本の名経営者の1人です。

私は京都に優良企業が多いことに注目してきました。日本電産の他にも任天堂、村田製作所、京セラ、オムロン、ジーエス・ユアサ、島津製作所、ローム、スクリーン、宝ホールディング、堀場製作所、ワコールなどがあります。いずれも技術力を元に独自の製品を開発し、日本で、世界で独自のポジションを確立している企業です。研究開発型企業が育つと言う点では日本では京都が1番でなはないでしょうか。私は以前京都ではなぜこのように研究開発型企業が育つのか考えたことがあります。そのときは、京都の次のような特質が影響しているという結論に至りました。

  • 本物を見極める目
  • 人まねをしない矜持
  • ぶれない姿勢

少し解説すると、(1)については、京都は古くは朝廷が置かれ、日本で一番良いものが集まったことから、本物を見極める目が養われました。その結果、本物とそれ以外は瞬時に分かるし、本物でも普遍性があるかどうかじっくり鑑定する目があると思われます。

(2)については、京大がノーベル賞を輩出しているように、人の後追いを良しとしない気風があります。日本でも京都は特別な街で、真似ようとしても真似られない街です。このような京都の町で育った人たちには、独自性を愛し、人まねを良しとしない気風が備わっているように思われます。

(3)は、京都人は、頑固に昔ながらのものを守って来ています。あれだけの寺社仏閣を今まで守れたのは、京都なればこそです。現に他の日本の街は、多くの寺社仏閣を消失ないし衰退させてきました。京都の人たちは、一度決めたら徹底的にやり抜くところがあります。姿勢がぶれないのです。一度決めたら、日本電産の永守会長の言う「できるまでやる」姿勢があります。

これら3つが重なったら、いつか成功します。それに京都には、ノーベル賞を輩出する知の拠点京大があります。独創性を評価する京都賞もあります。日本一の知の拠点東大がある東京は、常に人の評価に晒されており、じっくり腰を据えて取り組むには不適な場所です。その点京都は、東京から離れており、人の評価を気にせずにじっくり取り組む環境があります。

ヤフーニュースで日本電産の社長交代に関するコメント見ていたら、「京都の電気屋はみな同じ」という書き込みを見つけました。多分書き込んだのは京都人だと思います。京都の企業は大企業になっても京セラや日本電産のように組織の最小単位で採算をとるなど中小企業意識を守っています。京都は戦国時代に各地の強者大名が覇権を目指し押し寄せたところであり、住民にとってはいつ戦火に見舞われるか気が気でないところでした(その前に応仁の乱もあった)。京都の企業家には今もそんな戦国時代を生きているようなところがあるように思えます。そう考えると永守会長の姿勢も理解できますし、京都に優良企業が多い理由も分かるような気がします。