社外取締役にはスキル基準が必要

8月23日の日経電子版に、日経ベリタスの記事として「社外取締役選定、女性など争奪戦 適任者不足の懸念」という標題と次のような導入記事がありました。

「コーポレートガバナンス改革の担い手として社外取締役の役割が重みを増している。2021年6月のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改定により、東証プライム上場企業には独立社外取締役を3分の1以上選定することが求められたが、企業の間では人材不足への懸念も出ている。」(以下は有料記事のため不明)

私は以前「女性芸能人を社外取締役にする会社は「危ない会社」」というブログを書き、社外取締役の問題を提起しました。

社外取締役は会社法により2021年3月から大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)の公開会社(株式を自由に譲渡できる会社)に義務付けられたものです。これは企業統治(ガバナンス)を実効性のあるものにするためには、統治機関である取締役会にしがらみのない社外の人材を入れる必要があるという考え方に基づくものです。東京証券取引所は今年から上場企業に取締役の3分の1以上を社外取締役にするよう求めています。EUでは女性取締役の比率を3分の1以上にすることを義務化したようですが、日本政府は上場企業に女性役員の比率を10%まで高めるよう要請しています。これらの背景があり、女性芸能人の社外取締役就任増加に繋がっているようです。

しかしこれは社外取締役制度の脱法行為とも言えます。社外取締役制度は企業統治の強化を図るものであり、社外取締役はそのスキルを持った人でなければ務まりません。

報道されたいくつかの会社が女性芸能人を社外取締役就任に就任させるのには、社外取締役制度の意図とは異なった別の意図があるものと思われます。。

意図としては3つ考えられます。1つ目は広告宣伝効果狙いであり、2つ目は厳しい経営チェック逃れであり、3つ目は取締役会決議の賛成要員確保、です。多分報道された4名の女性芸能人の方はこれらの意図を薄々承知のうえで就任を承諾されたものと思われますが、これでは社外取締役制度が意味をなさなくなります。

これを防ぐためには、社外取締役および監査役になれる要件(スキル基準)を定めた選任ガイドラインが必要になると思われます。社外取締役の資格者は、

・上場企業の取締役または取締役経験者

・顧問弁護士以外の会社と利害関係がない弁護士

・監査契約中の監査法人に属さない、また会社と契約関係がない公認会計士

などに限られると思われます。そうなると資格者が不足し、東京証券取引所の取締役の3分の1以上を社外取締役とすると言う要件をクリアするのは難しくなると思われます。それでもふさわしい人がいないのに基準を満たすために無理やり社外の人を取締役にするのはこの制度の主旨を逸脱します。もっと時間を掛けて社外取締役を増やして行くようにするしかないと思われます。