国債で民間資金を吸い上げるから景気が良くならない

国債の残高が1,000兆円を超えたとか、日本の国債残高はGDP200%で世界最悪とか、日銀が国債残高の半分以上を保有している(11月10日現在557兆円)とか国債が怪物のようになっていることから、国債に興味を持ち国債の実体を探求しています。ここまでの探求では以前ブログに書いたように「国債は日銀券引き換え保証付きの借用証券」ということに行き着きました。国債が投資家から1,000兆円も保有されている理由は、日本政府が発行しているものであり、返済されないことは無いだろ言うと信頼に基づいています。しかし国債は必ず返済されると書かれた法律はありません。また国の収入は税金か国債が主であり、国債の返済原資としては最終的には税金しかありません。しかし税収が少ないから国債が発行されているのであり、それが積もり積もって1,000兆円まできています。そして2022年度の国家予算では税収不足が約35兆円になりそうです。こうなると税収で国債残高を返済するのは不可能です。このように収入で借入を返済できないとなると企業や個人では破産します。この例に倣えば国も破産し、国債残高は返済されないことになります。

しかし現在日銀が国債を金融機関(主として銀行)から買入れ557兆円も保有していることを考えると、国債は日銀買入により返済されていることが分かります。日銀が銀行から557兆円の国債を買入れた結果、国債557兆円の債権者は日銀となり、この債務者は国です。しかし日銀は財務省が55%出資する財務省の子会社であり、実質的には国の子会社(機関)です。従って日銀が国に返済を求めることは有得ず、実質的に557兆円の国債は国が償還したのと同じ状態です。ただし現在この国債の購入原資の大部分は日銀当座預金(490兆円)であり、日銀当座預金は日銀が国債を銀行から買い入れた代金などであり(法定準備金や銀行間決済資金などもある)最終的には銀行に返済する必要がありますから、今のままでは完全に償還したことにはなりません。これを完全に償還したことにするには日銀券557兆円を発行する必要があります。発行と言っても紙幣を印刷するわけではなく帳簿に記入するだけです。そして国債の放棄による損557兆と日銀券(負債)の免除による益557兆円を相殺することになります。これで国債557兆円は無かったことになります。帳簿上の操作であり簡単にできます。

これが分かると日銀は国債の処分場としての機能があることが分かります。こうして全ての国債は最終的に日銀により購入され、代わりに日銀券が発行されることになります。従って国債残高が増えることで心配されることは日銀券が増えたことによるインフレのみです。

日銀が557兆円の国債を保有していると言うことは、557兆円の日銀券を発行したことと同じですが、この国債の大部分は金融機関が保有していたものであり、557兆円の大部分は金融機関に支払われたことになります。しかし銀行はこの支払われた資金の大部分を日銀当座預金に置いたままにしています。何故なら0.1%程度の利息が付くからです。銀行に戻ってきたとしても国債の購入原資となっている銀行の預金勘定(負債)を消して終わりです(貸付金が返済されたのとの同じ処理)。

このように国債を日銀と銀行間でやり取りしていても世の中に流通するお金は増えません。というより国債で世の中の資金を吸い上げるから世の中に流通するお金が増えず好景気にならないとも考えられます。国債で吸い上げられたお金は予算の形で世の中にばら撒かれているのですが、それらのうち国債として1,000兆円が塩漬けにされており、商品や株、不動産などに回らないのです。国の予算の不足を国債ではなく日銀貸付で調達すれば、世の中のお金を吸収することはなく、予算支出によって世の中に出回るお金は純増となります。大量の国債が日本の景気が良くならない原因となっていることが分かります。