楽天銀行は住信SBIネット銀行と同時上場?

楽天の2022年第三四半期決算は2,870億円の営業損失となったようです。原因は言わずと知れたモバイル事業の赤字で、モバイル事業のセグメント利益が3,801億円の赤字となっています。これから見ると楽天市場などのネット事業は1,000億円程度の利益を出しているようですが、モバイル事業の赤字による資金流出で資金の確保が重要な課題となっています。

このため楽天は7月4日に楽天銀行の東証上場を申請し、遅くとも10月には上場でき、株式売却で1,000億円程度の資金調達が出来ると踏んでいたと思われます。ところがこれが今だに実現しておらず大きな誤算となっています。この原因は上場審査が終盤を迎えた9月初め楽天モバイル幹部が絡んだ資金不正が発覚し、楽天モバイルが不正を行った取引先の口座を差し押さえた結果取引先が倒産するという事件や楽天が2021年5月日本郵政の出資を受けるため既存の配送会社との契約を一方的に打ち切ったことが訴訟に発展したことなどが報道され、上場審査で問題とされたためと考えられます。また同じ頃S&Pは楽天を格下げ方向のクレジット・ウォッチにすると発表し、楽天の資金繰りのひっ迫が表面化しました。こうなると東証としてはこれらの問題が解消するまでは上場を承認できません。

資金不正や訴訟については会社の存立を脅かすものではないので経緯を説明すれば済むと思われますが、資金ひっ迫の問題はこれを払拭する必要があります。そこで楽天がとったのが楽天証券株式の20%をみずほ証券に売却することでした。これで約800億円の資金を確保し、楽天銀行上場の遅れをカバーしました。これで東証が上場を承認すればよかったのですが、これでも資金ひっ迫は解消しないと考えて、東証は上場承認の条件として更なる資金確保を求めたと思われます。その結果が11月24日に報道された楽天によるドル建債5億ドル(約700億円)の発行です。利回りが実質約12%となっていますので、楽天の信用低下が分かります(楽天がこの悪条件を受け入れたのは、償還時期(2年債)には110~120円程度の円高に戻っており、為替差益で支払利息を相殺できると計算したためか)

これで合わせて1,500億円の資金を確保したことになり、楽天銀行の上場で得ると思われる約1,000億円と合わせる2,500億円の資金を確保できることとなりますから、少なくとも今後1年は凌げると考えられます。こうなれば楽天銀行そのものには問題ないことから、東証としては上場承認しやすくなります。

それでも楽天の将来的資金繰り不安は解消されないことから、東証としては更なる承認しやすい環境が必要だったようです。そのために用意したのが住信SBIネット銀行との同時上場です。両社はネット銀行で1,2位を争うライバルであり、住信BSIネット銀行が上場を認められるなら楽天銀行も認められて当然ということになります。住信SBIネット銀行は10月7日に再上場申請をしており(今年2月上場承認されたが3月に市場環境の悪化を理由に上場中止を決定していた)、これは東証からの勧めがあったと考えられます。住信SBIネット銀行の場合、今年2月に一度承認されており審査に時間が掛かるとは考えられず、そろそろ承認される時期です。同時に、または前後して楽天銀行の上場も承認されると思われます。